目配りの限界と介護者の責任

明け方の徘徊など、認知症老人にはありがちなことだ。しかし今回の徘徊がなぜ問題だったかというと、トミ子が踏切近くで保護されたからだ。彼女が転倒したのは、踏切からわずか数メートルの路上だった。

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2007年12月、愛知県の老人が電車にはねられ死亡。遺族が鉄道会社から高額な損害賠償を請求された。老人は認知症を患っており、家族は細心の注意を払っていたが、ほんのわずか目を離したすきに外に出て駅構内に入り、事故に遭ったのだ。家族は一審で敗訴。700万円あまりの賠償金支払いを命じられた。その後家族は控訴し、最高裁で「亡くなった男性の妻、長男に損害賠償義務がない」と逆転判決が出た。

この「事件」の一審判決は、認知症介護の渦中にある庶民を震撼させた。予測不能な行動をする認知症患者について、介護者の責任が問われたのだ。当事者の家族は、いい加減な介護をしていたわけではない。玄関を出てしまうのを察知するため、センサーもつけてあったのだが、お年寄り本人がアラームを怖がるため、オフにしてあり脱走に気づけなかった。言ってみれば、老人の身になってやった行動が、悲劇を招いてしまったのだった。
私も、この「事件」を知ったとき、明日は我が身と肝が冷えた。