ゲノム研究によって、ヒトに至る遺伝子進化はどこまでわかったのか?

ヒトとなるには遺伝子発現の調節がカギ

ヒトは非常に発達した脳をもち、言語を操り、二足歩行をし、手を自由に使うことができるように進化してきました。このように高度な体制をもつヒトを含めて、生物のしくみをつくりあげる情報は、遺伝子によって親から子の世代に伝えられます。

この遺伝子の情報は、二本鎖のらせん構造をしたDNA(デオキシリボ核酸)という物質によって、細胞の核の中に保持されています。生物を形づくるDNA遺伝情報すべてのひと揃いをゲノムとよびます。ゲノムは、生物がより複雑な体制へと進化する中で、遺伝子数を増大させ、新たな機能を獲得してきました。

ゲノムの進化とともに、遺伝子自体の機能も変化していきました。人類が哺乳類の共通祖先から進化してくる段階で、どれほどの遺伝子に変化が生じ、その機能を変えて、ヒト化(ホミニゼーションといいます)に貢献してきたのでしょうか。

これは皆が興味をもつところで、大変魅力的なテーマです。しかしながら今までのところ、大脳皮質の発達や二足歩行を可能にした、ヒト化に決定的に働いた遺伝子進化は具体的にはとらえられていないといってよいでしょう。ただし、ヒトに至る進化の過程で、ヒトのさまざまな特徴の一部を決定するような遺伝子の進化は次々と見つかってきています。

ヒト化に貢献するふたつの遺伝子進化パターン

タンパク質をコードする遺伝子進化で、ヒト化に積極的に貢献した候補には大きく分けて2種類あります。

ひとつは、新たに生じたアミノ酸変化がタンパク質の性質に変化を与え、その結果新しい機能を獲得し、今までになかった生物種独自の機能を実現する場合です。

もうひとつは、今までもっていた遺伝子の機能が点突然変異などの結果生じたフレームシフト(DNAを構成する塩基の配列に欠失や挿入が起こること)などのなんらかの原因で失われるような場合で、偽遺伝子化といいます。

【CG】フレームシフト遺伝子の進化には、DNAのフレームシフトなどで、遺伝子機能を失うことによる場合もある photo by gettyimages

こちらは一見遺伝子が失われるということで何も寄与しないと思われるかもしれませんが、たとえば新しい環境に適応しなければならない場合、以前は役に立っていた酵素などが逆に新しい環境で害になることがありえます。このような場合、すみやかに遺伝子が消失したほうが積極的な適応をすることができる可能性があるのです。

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