フランスの田舎に住む7歳のサシャはバレエ、人形、そしてドレスが大好き。生まれた性別は男の子だが、2歳を過ぎた頃から「私はいつ女の子になるの?」と母親に聞くようになり、トランスジェンダーについて当時よく理解していなかった母親が「あなたは女の子になれないのよ」と言うと、さめざめと泣き暮れていたという。

(c)AGAT FILMS & CIE – ARTE France – Final Cut For real – 2020

両親はサシャを完全にサポートすると決心するが、その性自認に水を差す人々が現れた。それは学校とバレエの先生だ。学校はサシャを女の子として登録させず、スカートで登校することを禁止。バレエの先生もサシャに女の子の衣装を着させてはくれなかった。学校の女子からも男子からも疎外され、お友達も家に呼べないサシャ。そんなサシャと家族がトランスジェンダーに対する偏見に立ち向かう勇気ある姿を追ったドキュメンタリー『リトル・ガール』が11月19日に公開される。

出典/SENLIS FILMS YouTube 

監督はこれまでもトランスジェンダーやジェンダー規範をテーマにした映画で世界中の映画賞を受賞してきたセバスチャン・リフシッツ氏。通常、専門家は7歳の子供に対してトランスジェンダーと表現することは稀だという。けれども、リフシッツ監督は「トランス・アイデンティティの問題が体に変化が表れる思春期に起こると考えられているからこそ、思春期前のサシャの物語を理解する必要がある」という思いに駆られてメガホンをとった。リフシッツ監督に、子供のトランス・アイデンティティの課題について話を聞いた。

セバスチャン・リフシッツ監督
-AD-

トランス・アイデンティティの課題とは

――フランスでこの映画が公開されたとき、どのような反応がありましたか?

セバスチャン・リフシッツ監督(以下、リフシッツ監督): フランスでは何百万人もの人がこの映画を観てくれたことは私にとっても驚きでした。この映画のフランスでの成功を目の当たりにし私が感じたのは、トランス・アイデンティティは、トランスジェンダーの人たちやトランスジェンダー・コミュニティだけの課題ではないということ。

トランス・アイデンティティの課題は「女の子らしさとは何か」「男の子らしさとは何か」といったジェンダー規範や自由に対しての問題提起だと思います。また、本作は家族のドラマでもあるので、多くの人に響いたのではないかと思いました。

――サシャと家族の映画の反応はどうでしたか?

リフシッツ監督: 試写を観たサシャは「映画はすごくよかった。でも疲れた」と、顔が青白くなっていました。映画を観て改めて自分がたどった道のりを追体験し、疲労を感じたようでしたね。でも、サシャも家族も喜んでくれて、特に母親のカリーヌは感動してくれました。

母のカトリーヌは、常にサシャの一番の理解者だ (c)AGAT FILMS & CIE – ARTE France – Final Cut For real – 2020