Youtube「あの夏が飽和する。」(https://www.youtube.com/watch?v=mKaRxty1j7g)より

自作曲はYouTube上で1777万回再生、小説は11万部の大ヒット…「カンザキイオリ」とは何者なのか

YouTube上で1777万回再生された「命に嫌われている。」(https://www.youtube.com/watch?v=0HYm60Mjm0k)をはじめとするボーカロイド楽曲で知られ、1516万回再生の「過去を喰らう」(https://www.youtube.com/watch?v=tMKrECxEpq8)などの代表曲を持つバーチャルシンガー花譜の作詞・作曲・編曲を手がけるカンザキイオリ。彼が同名の自作曲を元に執筆・刊行した『あの夏が飽和する。』(河出書房新社、2020年9月発売)は、新人作家のデビュー長編としては異例の11万部と熱い支持を得た(ただ、数字より注目してほしいのはその苛烈な言葉、ほとばしる感情だ)。

そして2021年11月、自作曲「爆弾」「不器用な男」から派生した小説第2作『親愛なるあなたへ』が刊行された。小説投稿サイトでの執筆をきっかけに書籍化を果たし、小説を書きたい気持ちがありながらも、作家であった父が家庭をないがしろにしたまま死んだことから創作に対するおそれも同時に抱える春樹と、春樹の作品を心の支えにして生きているシンガーソングライター志望の雪を軸に、家族への激しい愛憎、表現者として生きることの業が、心を突き刺す展開の中で描かれていく。

その表現はどこから来たのかについて、また、第2作で描いた「やりたいことをやる」生き方についてカンザキイオリに訊いた。

YouTube「あの夏が飽和する。」(https://www.youtube.com/watch?v=mKaRxty1j7g)より
 

湊かなえや中島哲也、ヴァニラウェア作品に惹かれてきた

――まずはカンザキさんの文化的なバックグラウンドを少し教えてください。好きな小説作品は?

カンザキ 最近では遠野遥さんの『破局』、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』ですね。最初に衝撃を受けたのは湊かなえさんの『告白』。ほかにも『少女』などの湊さんの作品や、ミステリー系の作品も好きです。前作の『あの夏が飽和する。』(https://www.youtube.com/watch?v=mKaRxty1j7g)は、登場人物同士のつながりなんかにちょっとしたミステリー要素がある作品にしたいなと思っていました。

――『あの夏』も『親愛なるあなたへ』も複数の視点人物が代わる代わる語っていくスタイルで、視点人物ごとに見えている世界が違うことを使って読者を驚かせるしかけがありますが、湊作品が好きと聞いて腑に落ちました。『親愛なるあなたへ』の主人公・春樹は投稿サイトに小説を書いていましたが、カンザキさんは投稿サイトの作品も読みますか?

カンザキ 中高生のころ、ずっと読んでいた時期があります。本当にときどきですけど、最近でもふと、もう更新されていない作品を本当に読み返したりしています。

――たとえば?

カンザキ 「小説家になろう」に投稿されたルシカさんの「カカの天下」(https://ncode.syosetu.com/n7632b/)は高校時代に友だちと一緒に読んでいて、更新されるとハイタッチしあうくらい好きでした。小学生の妹と、社会人の兄が主人公のコメディなんですけど、最初はほんわかとした日常系だったのが、家族問題に深く突っ込んでいったり、すごく熱い友情展開になったり……。

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