人類進化の年代を測る科学のモノサシ「年代測定法」が明らかにしてきたものとは

トリノ聖骸布の謎をも解き明かした!
米田 穣 プロフィール

熱ルミネッセンス法の測定方法

熱ルミネッセンス法は、結晶につけられた放射線によるダメージを数える方法です。鉱物に熱を加えると蛍光を発生することは、古くから知られていました。これは、放射線によって高いエネルギー状態になっていた結晶中の電子が、熱によってもとの安定したエネルギー状態に戻るときに発生する光です。

【図(イラスト)】熱ルミネッセンス法熱ルミネッセンス法 illustration by saori yasutomi

蛍光の量は、高エネルギーになった電子の量に応じて増加します。すなわち長時間にわたって放射線を浴びていた結晶は、より多くの光を放つことになるのです。ある結晶が熱をうけるといったんは高エネルギー状態の電子がなくなります。しかし、時間とともに宇宙や周辺の土壌からやってくる放射線を浴びて、再び高エネルギー状態の電子を蓄積します。

加熱された結晶に含まれている放射線の傷(高エネルギー状態の電子)の量と、遺跡で1年当たりに測定される放射線の量がわかれば、そのふたつを割り算することで、結晶が熱をうけてからの時間が計算できるのです。

解剖学的現代人がネアンデルタールよりも古いという結果は、すぐに受け入れられたわけではありませんでした。熱ルミネッセンス法という新しい測定法は、まだ十分に検証されていないと批判されました。

しかし、同じころに発明された電子スピン共鳴法(Electron Spin Resonance : ESR法)でも、イスラエルの中期旧石器の遺跡で両者がほぼ同じ年代を示しました。それによって、ネアンデルタールよりも前に解剖学的現代人が存在したという結果は、受け入れられるようになり、現代人の起源に関して新しい議論を生みだすきっかけになったのです。

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