親ガチャにハズれながらも、表面的にはふつうの親子関係のように装っている史絵莉の様子はあまりにリアルだ。親ガチャという言葉がここまで流行ったのは、親子関係に悩みながらも「親子関係は良好で当然だ」という、世の中の暗黙の常識のようなものに苦しめられてきた人たちの多さが背景にある。

本作『神様を殺す子供たち』の作者である小宮みほ子さんは、今回、こういった複雑な親子関係にフォーカスした理由をこう語る。

「当時の担当さんに、『毒親』をテーマに描いてみませんかと提案していただいたのがきっかけです。毒親関連の本を読むうちに、その根の深さや改善の難しさを知っていき、描きたい気持ちが固まりました」

この作品を読み進めると、母と娘の、外側から見れば「仲良し親子」だけれど、本人にとっては「過干渉」に感じるといういびつな関係にじわじわと恐怖に近い感情が生まれる。

『神様を殺す子供たち』小宮みほ子/講談社
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こういった母娘関係のヒントになるようなものはあったのだろうか。

「本を読んでいるうちに、極端な『毒親』を除いて『毒親』のほとんどに悪気はないのだと知って、それはヒントになったかもしれません。そもそも毒を持っていない人間なんて居ないと思うので、『普通の毒親』が描きたいなと思っています」

前作『インザハウス 』では夫の不倫相手と、一つ屋根のしたで暮らす家族を描いた小宮さん。一見特殊に見える関係でも、それを「普通」にフラットな視点で描き、読む側に新しい気づきを与えてくれる。「親ガチャ」という言葉が特に若者層に流行っていることについては、どう感じているのだろうか。

「若者のノリが掴みきれていないかもしれませんが、そんなに悪いことではない気がします。家族間のことを他人と共有することで、楽になれる部分もあるのかなと思います。ただ、ハズレて当たり前くらいの逞しい気持ちでいて欲しいです(笑)」

最後にこの作品のみどころと、小宮さんのお気に入りのキャラクターを教えてもらった。

「史絵莉と母親の、それぞれの心の変化を出来るだけ丁寧に描きたいと思っています。キャラクターのなかでは、史絵莉の会社の同僚として出てくる黒川さんが大好きです。基本的にみんなに対して『それどうなん?』と思いながら描いているので、黒川さんが出てくると安心します(笑)。個人的には、大輝と黒川さんの進展も楽しみです。ぜひ最後まで見守って欲しいです」