2021.11.19
# 分子

ヤモリはどうして壁を登れるのか?

モノとモノをつなげる不思議な力

壁や窓をするすると登るヤモリ。読者のみなさんも、夜になると窓にはりついているヤモリを見たことはあるのではないでしょうか。ヤモリは昆虫などを食べ、南極をのぞく全大陸に分布する小型爬虫類です。日本には、ニホンヤモリをはじめ十数種類が生息しています。

ところで、いったいヤモリは、どのようにして垂直面を登ることができるのでしょうか? ガラスのようなつるつるした面をものともせず登り、また天井からぶら下がることもできます。とはいえ、足指が吸盤になっているわけでもないようです。

じつは、そこには、ある〈力〉がはたらいていることがわかりました。それがどんな〈力〉なのか見ていきましょう。

ヤモリの足指

ヤモリのあしの持つ自然界でも最高の吸着性能は、接着剤や接着テープなどへの応用を目指して長年研究されてきました。

4本のあしにはそれぞれ5本の指を持ち、よく見るとひだ状の構造がならんでいます。このひだが細かい鉤型になっており、目に見えないような細かな凹凸にひっかけて登ることができるのではないかという考えがかつてはありました。

【写真】吸着性能に優れたあしを持つヤモリその優れた吸着性について、ヤモリのあしは長年研究されてきた photo by gettyimages

解き明かされた秘密

ヤモリの足指の謎がようやく解明されたのは、2000年のことです。ルイス&クラーク大学の生体工学教授のケリー・オータム博士らが、その複雑なしくみを明らかにしました。なんとヤモリは吸盤やつめではない、驚くべきメカニズムで壁や天井にはりついていたのです。

それは、「ファン・デル・ワールス力」という原子間にはたらく力によるものです。ヤモリの足指に生えているひだ状の構造は趾下薄板(しかはくばん)といい、細かい毛のようなものが1平方メートルあたり10万~100万本も生えています。さらに毛の先端は100~1000本程度に分岐し

ており、1平方メートルあたりだと10億本にもなります。

【写真】ヤモリの指ヤモリの指真 photo by gettyimages

この細かな毛の1本1本が、壁や天井などにきわめて近い距離まで接近し、ファン・デル・ワールス力によって接着しているのです。しかも、毛の角度を変えることで、かんたんに接着面から離れることもできるということがわかりました。

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