40万円のエルメスのバッグ・ガーデンパーティを始め、さまざまな人気ハイブランドバッグを見事にバラバラに分解して解説する動画をYouTubeにて公開しているバッグ職人で、新進工房という自社ブランドを展開する仙入寛章さん、雅之さん兄弟。

数々のハイブランドの解体動画をアップする新進工房の革職人、仙入寛章さん、雅之さん兄弟。

その動画をYouTubeで見つけ、あまりの衝撃にぜひとも解体する動機などを伺いたいとライターの若尾さんが、バッグ職人兄弟に取材を申し込んだ。前編では、エルメスのガーデンパーティの解体の模様を含めて、ハイブランドの技術の高さをお伝えした。

後編では、素人の私達でもわかるブランドバッグの真贋見極め法、彼らが革職人を目指した経緯や平均年齢70歳(!?)という革職人業界の厳しすぎる現状についてうかがった。

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スーパーコピー(偽物)は素人で見極められるのか?

他の動画では、ブランドバッグの真贋も分解をして確かめているふたり。プロの革職人なら、やっぱりひと目見てピーンとくるものなのだろうか?

「いや、スーパーコピーと呼ばれるような比較的価格も高めで材質も作りも本物とほぼ同じ、そっくりに作られている精巧なコピー品は、外側から見ただけだと本物か偽物か見分けるのは難しいです。質屋さんにはロゴの文字や製品番号など独自の見分け法があるようですが、僕らはあくまで革職人なんで、製品を触って革の感触を確かめたり、縫い目を見たり、分解してみないとわからないですね。

というか、正規のブランドショップから修理を任されている職人さんによると、お店から修理品として届いたものの中にも、分解してみるとニセもんだったってのがあるらしいです」(寛章さん)

彼らの動画にも、エルメスのピコタンを分解して、真贋判定する動画があるが、作り自体はハイレベルな職人が作ったものに間違いないという。

左がバーキンのスーパーコピーで、右が本物。パッと見た目ではわからないほど寄せている偽物も増えている。写真/新進工房

「実は、僕らの工房ではエルメスと同じ革素材も扱っています。それなのに、触ってみるとその革がいつもと違って顔料がベタベタしてるなというのが第一印象でした。でもステッチも細かくてしっかりしていたし、見えない部分も丁寧に補強してあって、素晴らしい作りなんですよね。しかし、芯に使われてた布がエルメスなのに別のハイブランドのモノグラム柄で『あれ?』って。さすがによそのブランドの柄生地をわざわざ自分とこの商品に使うわけ無いです、贋作ですよね。

たぶん海外の腕のいい職人さんが、業者に頼まれて『ちょっと工賃のいい仕事』として作ったんじゃないかな。こういったスーパーコピーと呼ばれる商品は、悪徳業者がそのへんの職人を適当に連れてきて作れるレベルじゃないです。あのバッグには偽物ではあるものの、職人の意地というかたとえコピー品でも自分の仕事には手を抜かないというプライドが見えましたから、僕らもすごく勉強させてもらいました」(雅之さん)

こうした超スーパーコピー品は別にして、素人でもわかる偽物を見分ける方法はあるのだろうか。

「僕らはパーツごとの処理が丁寧かどうかとか、ミシン目や糸締まりとか革の質感など、トータルで判定するので、素人の人が見分けるのは難しいですね。バッグを分解したら使えないし(笑)。やっぱり真贋が入り混じって出品されているネットのオークションやフリマで買うのはリスクが高いです。実物を見て中古品を買うとき観察するなら、ポイントは縫い目、ステッチです。

ステッチが曲がっていない、ピッチ(縫い幅)が均等で糸端がきちんと処理されているというのは基本ですが、ブランドでは『1センチ内に縫い目は○個』というのも決まってるので、同じ部分(左右のハンドルの止め部分など)で縫い目の数が違っていることはないし、縫い目が重なっている返し縫いも『何目折り返す』と仕様が決まってますから、バラツキがあったら偽物を疑ったほうがいいかも」(寛章さん)

上が偽物、下が本物のバーキン。やはりステッチをしっかり見ると違いがよくわかる。
上が偽物で、下が本物。もっとも耐久性を求められるハンドルのつなぎ目部分にも違いが明らかだ。

返し縫いの縫い目の数まで決まってるとは、さすがハイブランド。やっぱり高いだけのことはある。彼らの最新動画では、エルメス・バーキンの見分け動画も配信中。こちらも要チェックだ。