『鬼滅の刃』 テレビ放送の常識も変える、その「ウィンドウ戦略」

『鬼滅』はビジネスモデルの「改革者」
数土 直志 プロフィール

いずれの放送回も、アニメが地上波キー局ゴールデンタイムでほとんど放送されなくなったなかで異例の扱いである。さらに10月からの第2シーズンも深夜帯ではあるが、一般視聴者がまだテレビの前にいる23時台の地上波放送もまた珍しい。

いまでも夕方や週末朝に放送されるアニメは、いずれも視聴率上位の長年の人気作品であるだけでなく、もうひとつ特徴がある。実はこうした作品は、いずれも放送局や放送枠を確保する広告代理店が製作出資に結びついていることだ。

『サザエさん』を制作するエイケンは広告代理店ADKのグループ会社、『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』を制作するシンエイ動画はテレビ朝日の子会社、『ワンピース』はフジテレビ、『プリキュア』シリーズは朝日放送、『名探偵コナン』は読売テレビ、『ポケットモンスター』はテレビ東京が製作出資する。一般的には製作出資をすることで、その後の商品化、キャラクタービジネスなどの二次展開をする。これらは放送のスポンサー広告収入よりも大きな利益になる。

ところがフジテレビと『鬼滅の刃』にはそうした出資関係はない。フジテレビはテレビ放送権を購入する立場であり、製作出資に加わっていない。

フジテレビの『鬼滅の刃』に対するこれほどの厚遇の理由はなぜだろうか。

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それはたとえ製作出資がなくても、『鬼滅の刃』の放送の恩恵が大きいことにある。5本の総集編の視聴率は13.3%~15%と、新作映画の放送にも匹敵する数字になった。この視聴率に作品の人気と認知度の高さがあれば、スポンサー集めにも力を発揮する。

これまでテレビアニメとテレビ局の関係は、特に深夜アニメではテレビ局が優位にあった。作品の認知を広げたい放送局以外のアニメ製作者が自らスポンサー枠に広告を出稿する。持ち出しで放送枠を買い取るかたちだ。

しかし『鬼滅の刃』では逆に放送局が製作者に放送権料を支払うことになり立場が逆転をする。お金を払ってでも、ゴールデンタイムに枠を用意しても放送したい作品なのだ。

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