仕事が終わった藤原さんは、ベトナム人の担当者にもう一度守衛に話してもらい、工場を出るときにパスポートをようやく返してもらい事なきを得た。

「ベトナムの担当者には事前に私からちゃんと説明していましたが、その話が守衛さんレベルまで回っていなかったんです。もし守衛さんがもっと頑固な人だったり、訪れた国がベトナムじゃなくてもっと政治的に不安定な国だったりしたら……と想像するとゾッとします。この事件で、旧姓使用がいかに海外で通用しないのかを身にしみて感じました」と振り返る藤原さん。

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娘やその結婚相手に同じ思いをさせたくない

藤原さんが選択的夫婦別姓を希望する理由は他にもある。

「妻の姓に変えたことに後悔はないのですが、書類手続きで妻の姓を記入する度に『あぁ、自分の本当の名前はもう戸籍上では存在しないんだな』と一抹の寂しさや喪失感を感じます。

改姓手続きは本当に大変なうえに、戸籍姓と旧姓の使い分けから起こるトラブルや不満、そして、改姓したときに受ける偏見……。私にはひとり娘がいますが、こんな思いを娘にしてほしくありません。もちろん、娘の結婚相手にも

〔PHOTO〕iStock

ひとりっ子が多い現代では、家名や自分のアイデンティティの存続のために、結婚時に改姓したくない人は男女ともにいる。夫婦同姓の強制で苦しみを感じるのは、なにも女性だけはない。これからの若い世代の誰もが当事者になり得るのだ。