「旧姓使用」のせいで、パスポートを取り上げられた

海外出張の度に現地の人に名前の説明・確認を必ず行う藤原さんは、その努力のかいもあり、一昨年までは問題が起こったことはなかった。しかし、コロナ禍直前の2019年、ベトナムでトラブルが発生。ベトナムの取引先はきちんと戸籍名でホテルを予約してくれたのだが、彼らの工場に到着したときに問題が起きた。

ベトナムの工場を訪れた際、入り口の守衛に身分証明書を求められた藤原さん。どうやら守衛はオフィスから「招待客リスト」なるものを預かっていたらしく、そのリストと招待客の身分証明書を見比べていたのだが、招待客リストでは藤原さんの名前が旧姓になっていたのだ。

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藤原さんのパスポートと招待客リストを交互に見ながら、その守衛は不審者を見るような目で藤原さんをジロリと睨んだ。そして何やらベトナム語でつぶやき、藤原さんのパスポートを手にしたまま電話をかけて話すこと10分。すると、藤原さんも知っている担当者のベトナム人が工場のなかからやって来て事情をベトナム語で説明してくれた。結局、守衛は半信半疑の表情を残したまま、藤原さんを工場へ入れてくれたが、なぜかパスポートを返してくれなかった。

ベトナム人の担当者にパスポートを返してもらうよう守衛にお願いしてもらっても、守衛は「もうちょっと調べたいから」と頑なに拒否。藤原さんは工場で終日仕事をしている間ずっと、返してもらえるのか気が気ではなかった。

「まさか取引先の人がパスポートを取り上げることはないだろう、とは思いましたが、それでも万一のことが頭に過ぎってしまい、正直不安でしたね」

〔PHOTO〕iStock