「困っている人がいたら助ける」

無事全員が建物から逃げた頃に消防車が到着し、結局火災自体はそれほど深刻な状況にならずに食い止められたようだ。とりあえず、今夜はこのホステルで寝ることができないと判断され、各々が別の宿を探すことになった。

ガイルは同室だった私を見つけると、すぐに駆け寄ってきてくれた。『こんな夜中に女の子1人で宿まで歩くなんて危険だ。宿が決まったらそこまで送っていくから大丈夫だよ』

もはや神だ......。何でここまで見ず知らずの他人に親切にできるのか全く分からない。その後、ガイルと新しいユースホステルにチェックインして数日間また彼と同室になったが、口説いてくるようなことも全くなく、その後の彼を観察してみても本当に誰にでも分け隔てなく親切な好青年だった。

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「ねえ、火事の時、何で逃げずに皆を助け続けたの?怖くなかった?何で赤の他人にそこまで親切にできるの?」と聞くと、『え!?あぁ、あの時は何にも考えてなかったよ。身体が勝手に行動してただけで怖いとか考えるよりも、とにかく全員無事に外に避難させなきゃって必死だったんだ」

さらに、『他人とか全然関係ないよ、困ってる人がいたら助ける。それって僕にはごく当たり前のことだから』と真っ直ぐな瞳でさらりと言うガイル。

困っている人を助けるって凄くシンプルなことだけど、そんなシンプルなことほどなかなかできなかったりする。人間は大人になるほどに損得勘定が本能的に働いてしまうものかもしれない。誰かを助けたら自分が怪我をするかもしれないし、どうせ他の人が助けるから自分が助けなくても大丈夫……。そんなメリットデメリットが頭に浮かんでしまい、あれこれ悩んでいるうちに時間が経過してしまう。

チーズファクトリーでは新鮮なチーズが作られる過程が見学できる。写真提供/歩りえこ