1日40錠以上の人も!高齢者の薬が多すぎるという問題【医師・山田悠史】

ミモレ編集部 プロフィール

世界中で起こるポリファーマシー


なぜこのようなことが起こってしまったのでしょうか。薬を処方する多くの医師が「患者さんを助けたい」との思いで薬を処方しているはずです。にもかかわらず、Cさんの場合、それらの思いが Cさんを苦しめることにつながってしまっていました。

皆さんは、「ポリファーマシー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

 

「ファーマシー」という言葉ならご存じの方が多いでしょう。「ファーマシー」は「薬局」「薬学」という意味を持つ言葉です。そして、接頭辞の「ポリ」は「数多くの」という意味を持ちます。この両者をかけ合わせて、「患者さんが数多くの薬を飲んでいる状態」のことを指します。

実際に、こんなデータがあります。

「60歳以上の高齢者の約3人に1人が5つ以上の薬を内服している」(参考文献1)

実は、Cさんのようなケースは決して稀ではないのです。

 

薬が増えれば増えるほど、気をつけるべきは「薬物相互作用」


ただし、はじめに断っておきたいと思いますが、これは必ずしも全部が全部悪いこと、というわけでもありません。例えば、心筋梗塞を一度経験した人の場合には、次の心筋梗塞から心臓を守るために、最低でも4種類の薬を飲まなければならず、薬がそれ以上になることも稀ではありません。しかし、その人が薬を5種類や6種類飲んでいるからといって、「ポリファーマシーだ」「問題だ」ということにはなりません。薬は必要な時には必要なのです。

しかし、問題は薬が増えれば増えるほど、その中に不適切な処方が混ざっていることが稀ではなくなるというところにあります。実際にCさんの処方薬の中にも半数近くは不適切または不要と考えられる薬を見つけることができました。

また、薬が増えれば増えるほど、薬物相互作用と言って、飲んでいる薬同士が影響を及ぼし合い、一緒に飲んでいる薬の効果を不適切に強めてしまったり、弱めてしまったりすることで、副作用のリスクと、薬を飲んでいるのに効いていないというリスクが高まったりします。このようなことはなるべく避けなければなりません。

このように、薬と上手に付き合っていく上で、不適切な薬の内服がないか、薬物相互作用はないかといった点に十分注意することが重要になります。


参考文献
1 Qato DM, Wilder J, Schumm LP, Gillet V, Alexander GC. Changes in Prescription and Over-the-Counter Medication and Dietary Supplement Use Among Older Adults in the United States, 2005 vs 2011. JAMA Intern Med 2016; 176: 473–82.


山田 悠史
米国内科専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国各地の病院の総合診療科で勤務。2015年からは米国ニューヨークのマウントサイナイ大学関連病院の内科で勤務し、米国内科専門医を取得。現在はマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。国内ではニュースメディアNewsPicksの公式コメンテーター(プロピッカー)やコロナワクチンの正しい知識の普及を行うコロワくんサポーターズの代表として、国外ではカンボジアでAPSARA総合診療医学会の常務理事として活動を行なっている。『日米で診療にあたる医師ら10人が総力回答!  新型コロナワクチンQ&A100』(日経メディカル開発刊)が発売中。
Twitter:@YujiY0402


構成/中川明紀
写真/shutterstock

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