「押し買い」という悪徳商売に引っかかる

どうやら、その「廃品回収業者」は、少し前からこの界隈を下見していたらしい。最近0120局番の電話が頻繁にかかっており、怪しいと思っていたのだ。その日はデイサービスのお迎えが諸事情で2時間ほど遅れた。業者はどこで情報を得たのか義母に電話をかけ、年寄りしかいないと判断して訪問したと推測された。

インターネットで番号を調べると、廃品回収業者であることは確かだったが、実は「押し売り」ならぬ「押し買い」と呼ばれる詐欺まがいの商売をする業者とわかった。多くの場合、世間知らずのお年寄りを狙い、親切そうな言葉をかけて、衣類や日用品、貴金属を安い値段で買い叩いて持ち去ってしまう。それらを高額で売りさばいて利益を得ているのだ。義母については、おそらくボケていると判断して、お代はあとで持ってきます、などと丸め込んだのだろう。

ある程度我が家のルーティーンを調べた上で、義母がひとりのときを狙ってきたとしか思えなかった Photo by iStock
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言っても仕方のないことだが、思わず「なんで知らない人を家に上げちゃったんですか!」と声を荒らげてしまった。すると義母は、自分でも情けないと思っていたのだろう、声を震わせて抗議してきた。

「私はこんなになっちゃって、お金もなくて、悪い悪い、孫にもなんにもしてやれないと思ってたんだよ。だから4万円もあれば、明子ちゃんになにか買ってあげられるかと思ったんだよう〜」

わかったわかったとなだめたが、義母はなおも大声で嘆いた。

「容子さんにも、何か買ってあげようと思ったんだよ。いっつも感謝してたんだよう〜。感謝してたんだってばあ〜」

両手で膝を叩きながらわめく義母。まるっきり「感謝している」ように見える態度ではなかったが、本心からの言葉であることはよくわかった。この興奮状態は、30分ほどしてようやく落ち着いた。

翌日私は、玄関に「押し買い業者お断り。警察に通報済み」と大きく書いた紙を貼り出した。近所の住人がなんだなんだと問い合わせてきたので、状況を説明し、注意を促した。