認知症の介護は実の親でも本当に大変だが、それがもともと行動に謎が多く、親しくなれずにいた義理の親だったらどうなるのか。
そんな状況を名前を伏せてお伝えしているドキュメンタリーが上松容子さんの「謎義母と私」である。

義母に軽度の認知症が確認された際に、医師から「発達障害かもしれませんね」と言われ、腑に落ちたというほど、上松さんはその行動に振り回されていた。
今回は、義母が悪徳買い取り業者に騙されてしまった時の話をお伝えする。
ずっと付き添うこともできず、かといって部屋に閉じ込めることもできない。互いの健康を維持するために、上松さんが乗り越えてきた道とは。

容子    20代後半で結婚。現在50代
夫・K     容子と同い年。営業職
明子    容子と夫の一人娘
実母登志子 昭和ヒト桁生まれ 元編集者を経て専業主婦。認知症で要介護2
義父       東京近郊在住 大正生まれ 中小企業社長
義母トミ子 昭和ヒト桁生まれ 元看護師 専業主婦。数年前から認知症の傾向で要介護1
上松容子さん連載「謎義母と私」今までの連載はこちら
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ちょっとしたスキに怪しい人物が家に…

義母トミ子の認知度が急激に落ちたため、デイサービスを毎日利用し、夕飯まで食べさせてもらう日々が始まった。休みの日も、できるだけ目を離さないようにしていた。

しばらくは問題も起きずに穏やかな日々が続いた……と思っていた。

ところがあるとき、私が仕事から帰宅するなり、義母が駆け寄ってきて「容子さん、物を売ったお金がどこにもないんだよ」と訴えてきた。物を売った? お金がどこにもない? どういうことだろう。義母はもちろん働いていないし、お金の出し入れも私や夫がやっているから、彼女の生活でお金に絡むことはもうないはずだった。

また妄想を元に勘違いをしているのかと思ったが、なにか言わないと収まらないような様子なので、座って話を聞くことにした。

「あのねえ、今日の朝、玄関のピンポンが鳴るから出てみたの。そうしたらさ、身なりのきちんとした男の人がいてね、『お宅に何か不要なものはありませんか?』って聞くんだよ。うちにはロクなものはありませんって最初は断ったんだけど、『どんなに使い古したものでもけっこうですよ』って言うから、部屋に上げたんだよ」

やはり妄想か。

「いやー、でも突然そんなきちんとした人が来ますかね」。私は彼女の妄想を否定して、現実に引き戻そうとした。

「本当なんだよ。そこに座って、『どんなものでもいいんですよ。タンスを見せていただけますか』って言ったんだ。それで、あちこち探して、洋服とかまとめて持っていったんだよね。『全部で4万3千円です』って。だからどこかに4万3千円があるはずなのに、どこにもないんだよ。Kが勝手に持っていっちゃったのかね」と、心底当惑した顔で聞いてくる。Kとは私の夫、つまり義母の息子のことだ。

待てよ、4万3千円って、やけに細かい数字だな。この瞬間、嫌な感じがしたので、慌ててタンスの引き出しを開けてみた。なんと! 伸び切った下着や靴下、かなり古いブラウスが残っているだけで、あとはスカスカになっているではないか。ウォークインクローゼットからも、上着類がなくなっている。アクセサリーの箱を開けた形跡もあった。七宝焼のブローチがひとつ、なくなっていた。しかし、肝心の4万3千円はどこにもない

タンスに残っているのは着古したものだけでほぼスカスカに…Photo by iStock

「どこにもないですよ、私もKも今日は出かけていたし、今初めて知ったんですから」と言うと、お金がないということにショックを受けたらしく、その場にへたりこんで呆然としている。これは相当な悪徳業者ではないか?