何年か一度、必ず暴落は訪れる
――新型コロナの感染拡大以降、先行きの見えぬ不安から、蓄財のために株を始める人が増えているそうです。今回の著書は、まさにそういう人たちに向けた株の入門書になっているわけですが、彼らにどんな投資を勧めたいですか?
桐谷:これから株を始める方には、値上がりを狙うギャンブル的な買い方だけじゃなく、優待や配当を重視した「農業的投資」もあるということを是非知ってほしいし、こちらの方を勧めたい。
それと、リスクを減らすために、分散投資を心懸けることですね。詳しくは著書を読んでいただきたいのですが、今10〜20万円しか金融資産がない若い方も、私が勧める買い方を実践してくれれば、老後は、年金を当てにせずに優待で暮らせるようになるはずです。
私自身、リーマンショックでボロボロにされるまでは、猛獣狩り的な投資をしてましたから、そちらに飛びつきたくなる気持ちは痛いほど良く分かります。当時の私は、アフリカの草原にライオン狩りにでも行っているつもりでいたんですね。肉も毛皮も売って大儲けしようと企んでいたわけですよ。
でも、撃っても撃っても弾が当たらず、挙げ句の果てには、逆にライオンに襲われ、死にかけた。イケイケの時にはつい忘れてしまうのですが、猛獣狩りって狩りが上手ければいいのですが、弾が外れたら襲われるんです。

私が尊敬する評論家の岩崎日出俊さんも仰ってましたが、素人はギャンブル的な投資に手を出さない方が良い。コロナの影響は多少ありましたが、一応アベノミクスの延長線上で平均株価が上がってきていますよね。だから、ここ数年で株を始めた人は、まだ痛い目を見てないと思う。でも何年か一度、必ず暴落は訪れる。これだけは忘れないで頂きたい。
それから、狩猟的な投資は精神的な負担も大きい。常に平均株価が気になって、仕事も手に付かなくなってくるんです。私の場合、独身ですので将棋を辞めて信用取引ばかりやっていた数年間は孤独で、リーマンショックに見舞われてからは精神的にもかなり追い詰められました。
狩猟的な投資をしていると、皆一人勝ちを狙っているわけですので、友達のような投資仲間って作りづらいんです。友達のようでありながら、結局はライバルになってしまう。いかに出し抜くか、それしか考えませんから。周囲の人間が勝つと嫉妬するし、失敗したら「ざまあみろ」と思ってしまう(笑)。