国民の血税を食い物にする「幽霊病床」はなぜ生まれたのか?

日本のコロナ対策の本質的問題
鈴木 亘 プロフィール

幽霊病床

さらに、使われた補助金も、本当に効果があったのか疑問符がつく事例が報告されています。いわゆる「幽霊病床」の問題です。

第5波の最中の2021年9月に、日本テレビの独自取材として驚くべき内容が報道されました。コロナ患者をすぐに受け入れられる「即応病床」と申告している東京都内172の病院のうち、病床使用率が40%未満の病院が27もあり、うち7施設は患者の受け入れ数がゼロだったというのです。

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既に述べたように、これらの病院には1床あたりの支援金に加えて、空床に対する病床確保料が支払われています。それなのに、第5波のピーク時においてすら、コロナ患者の受け入れを拒否するというのは、さすがに「食い逃げ」行為だと言われても仕方がありません。

これはもちろん、病院側のモラルにも問題がありますが、厚生労働省による補助金の制度設計にも甘さがあったと言わざるをえません。補助要綱には、補助金を受けた医療機関は、都道府県からの入院要請があった場合に、正当な理由なくコロナ患者受け入れを断らないことが規定されています。

しかし、⑴「正当な理由なく」という条件があいまいであることや、⑵確保病床が実際に使われているどうか、都道府県による確認作業が必須化されていないなど、病院が食い逃げできる隙を与えていたのです。

 

制度設計はビジネスライクに

厚生労働省は慌てて、患者を受け入れていない場合には補助金対象外になりえるとの事務連絡を発出し、田村厚生労働大臣も、補助金返還もやむなしとの見解を記者会見で示しました。

厚生労働省や都道府県の立場に立ってみれば、「それは言わずもがなではないか……」ということなのかもしれませんが、民間病院に対して金で解決を図ろうとするのであれば、性善説に立つのは甘すぎるのです。民間病院はビジネスなのですから、補助金の制度設計もビジネスライクに行うべきです。

厚生労働省は未だに、補助金が適切に使われていたかどうか実態調査を行うように、都道府県に指示を出していませんが、これは早急に行わせるべきです。そして、コロナ患者を受け入れていなかった病院には、きちんと補助金返還を迫るべきでしょう。ここで強い態度を示さないと、この先も国民の血税が食い物にされ続ける可能性があります。

『医療崩壊 真犯人は誰だ』
「世界に冠たる日本の医療」などと、医療提供体制の充実ぶりを誇っていた我が国が、なぜ、世界的には「さざ波」程度の感染者数増加で、このように簡単に医療崩壊を起こしたのか。一部の医療機関が頑張る中で、まったく何もしていない医療機関があるのはなぜなのか。医師会や専門家会議はなぜ、緊急事態宣言で経済をストップすることばかり提言するのか。本書では、多様なデータを参照しつつ、これらの疑問に答えていく。 また、パンデミック時の医療崩壊を防ぐためにどんな手立てがあるのか、アフターコロナ時代の平常時の医療をどのように改革すべきかといった、今後を見据えた議論・政策提言も行う。

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