なぜ日本は、いとも簡単に医療崩壊の危機に陥ったのか

「世界に冠たる日本の医療」の脆弱性
鈴木 亘 プロフィール

感染者数は外国に比べて桁違いに少ないのに...

図表1-3、1-4は、主要国の人口100万人当たりの新型コロナ感染者数と、その死亡者数の推移をみたものです。累積数で表しているので、感染者や死亡者の数が時間とともに合計されていって、積み上げた数になっていることにご注意ください。諸外国に比べれば、我が国の感染者数はまさに桁違いに少ない状況であることが一目瞭然です。

我が国からみれば、想像を絶する感染状況だったドイツやイギリスでも、医療崩壊、あるいは医療崩壊の危機と呼ばれる状況は生じていません。イタリアやアメリカ・ニューヨーク市では当初、確かに医療崩壊が生じましたが、その後の感染の波では、病床数を大幅に増やして順調に乗り切っています。

なぜ、我が国だけが、桁違いに少ない感染者数、死亡者数にもかかわらず、諸外国でも珍しいほどの医療逼迫を起こしたのでしょうか。しかも、新型コロナウイルスの感染拡大が始まって2年近く経っている現在でも、感染拡大の波が来るたびに、相変わらず医療崩壊の危機を繰り返しているのはどうしてなのでしょうか。

 

突出した病床大国

第二に、我が国の医療提供体制は、諸外国に比べて特に充実していると考えられてきました。

コロナ禍の前には、厚生労働省や日本医師会は、「世界に冠たる日本の医療」などと、我が国の医療提供体制を自画自賛してきました。それもそのはずで、我が国の医療機関の病床数は、諸外国に比べて突出して多いのです。まさに世界に冠たる「病床大国」と言って良いでしょう。

その病床大国ぶりを具体的なデータで見ておきましょう。例えば、2019年時点で、日本の人口1000人当たり病床数は12.8と、先進各国(OECD加盟国)平均の4.4を大幅に上回っています(図表1-5)。また、新型コロナ入院患者に直接関係する急性期病床数についても、やはり日本は人口1000人当たりで7.7と、先進各国(OECD加盟国)平均の3.5を遥かに凌駕しています(図表1-6)。

ちなみに、急性期病床とは、病気を発症して間もない時期で、患者の容態が急速に悪化する「急性期」に、集中的な医療を提供するための病床です。医師や看護師などの医療スタッフが通常よりも手厚く配置されています。この充実した病床体制でなぜ、医療逼迫が起きるのか、確かに大変不思議なことです。

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