現在の「声」の状況、それが奇跡的であること

本来であればALSの進行によって呼吸機能が低下し、声が出にくくなる状態になっていてもおかしくない私の容体です。それが他に比べて著しく進行が遅いために免れているという奇跡がまだ続いています。呼吸が出来なくなるのを避けるために「気管切開」をする方法があるのですが、私はその状態に至っていないのです。

気管切開には、誤嚥を防ぐために喉頭分離術という方法があります。しかしその代わりに声を失う事になるのです。色々な方法で声を出すことが出来るようにしてコミュニケーションを取る方法もあり、開発されているのも事実です。その勉強もさせていただいていますし、SNSでもそういう事例が紹介されています。

しかし残念ながら、そのような「声」は、お芝居が出来るような声ではありません。あくまでも周囲の皆さんとコミュニケーションが取れるという感じです。「津久井さん、贅沢言ってる場合じゃ無いでしょう」という意見があるのは当然だと思います。そもそもこの気管切開は、「呼吸が出来なくなる」という命にかかわることに対しての治療なのですから。ALS罹患者の多くが直面することです。

呼吸機能検査と合わせて訪問してくださっているSTのGOさんに現状の機能を診てもらいました。「パ・タ・カ」の連続発声は通常の平均値の2倍くらいの数値を出し、首の可動域も正常、舌のストレッチも正常、そして「あぁ~」という発声は21秒、「シューッ」という息吹は31秒を座位で記録しています。

少し前のニャンちゅうの収録風景。トレーニングをしてきたとはいえ、これほどまで声が出るのは「奇跡」と言われているという 
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自分の分野であるボイストレーニングでも「立っていない」つまり足で踏ん張れない状態でなくても腹式呼吸での支えを座位で出来るように工夫しています。表情筋が衰えないための口唇舌の運動トレーニングなどは毎日の課題です。声の心配をものすごくしていただいているようですので、トレーニング方法や数値でご報告させていただきました。たくさんの皆さんの応援も奇跡の源です、本当に感謝しています。

この維持が奇跡であるならば、持続力のある奇跡であることを願います。現在のトレーニングやリハビリのおかげであるならば、あきらめることなく続けていこうと思います。
「津久井さん、声の出る限りやりましょう」と言ってくださっている関係者の皆さんの思いにこたえていきたいと思っています。

2021年のハロウィン。ヘルパーさんと楽しみました! 写真提供/津久井教生

【ALSと生きる 次回は11月20日(土)公開予定です】

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最強助っ人「まかニャン」とリハビリに励む津久井さんの姿が見られる2021年11月5日公開の動画はこちら↓