メルケルが「保守の仮面を被った社会民主主義者」と言えるこれだけの理由

実は社民党政権の誕生を喜んでいる?

CDUをぶっ壊したメルケル

10月30日と31日、ローマでG20サミット(主要20ヵ国会議)が開催された。あと1ヵ月ほどで引退するメルケル首相にとっては最後のサミットだったが、そこに次期独首相と見込まれているショルツ現財相(社民党・SPD)を同伴した。

バイデン米大統領やトルコのエルドアン大統領には丁重に紹介。マクロン仏大統領とのスリーショットを演出したり、重要な会談の場でも自分の後ろにショルツ氏を座らせたりという光景が繰り広げられた。まるで「これからは息子をよろしく」と挨拶回りをする母親だ。

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ドイツ政治に詳しくない読者のために少し説明させてもらうと、CDU(キリスト教民主同盟)のメルケル政権4期16年のうちの3期12年は、社民党との連立だった。ドイツは戦後、二大政党制をうまく機能させて発展してきたが、そこで常に切磋琢磨していたのがCDUと社民党で、この2党は本来ならばライバルと言える政党だ。CDUは中道保守で、社民党は中道左派。

ところが、CDUと社民党との連立政権が続く間に、社民党の掲げる社会主義的な傾向の強い政策をCDUが次々と実行していった。たとえば脱原発の加速、中東難民の無制限受け入れ、同性婚の完全合法化、移民の大量導入、従来の伝統とは一線を画した家族政策など。

もし、これらを通そうとしたのが社民党であったなら、CDUの強い反発を招いたと思われるが、保守の党首であるメルケルが行ったため、大きな抵抗が起こらなかった。ドイツメディアはかなり左派なので、左傾化を歓迎したということもある。CDU内の保守勢力は次第に不満を募らせていったが、メルケル人気に押されて口をつぐんだ。

 

その結果、CDUは左傾化しただけでなく、今年9月の総選挙では物の見事に空中分解してしまった。現在、不毛な内部抗争と権力争いの真っ最中で、ラシェット党首に選挙敗北の責任を押し付けて失脚させたはいいものの、その後任さえ決められない。日本にもかつて「自民ぶっ壊す」と言った自民党の首相がいたが、メルケル首相は本当にCDUをぶっ壊してしまった。

しかし、である。ドイツではまだ社民党政権が成立したわけではなく、現在、緑の党と自民党を相手に夜を日に継いでの連立協議中だ。当然、ショルツ氏はまだ次期首相ではない。メルケル氏が彼を自分の後任として世界の首脳の集まる場所に同伴し、紹介するのは、それらの事実を無視した超法規的な行動に他ならない。

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