2021.11.06
# 中国

食糧危機は中国から始まる――14億人の民を誰が養えるのか

命運を握る先進食料輸出大国

8000万人が犠牲になった惨劇

公式統計によれば現在の共産主義中国の人口は14億人だが、一人っ子政策の影響などで(たくさんいる子供のうち一人しか戸籍に登録しない)無戸籍者が多数いるとされるので、実際の人口はもっと多いとする見方が一般的だ。

それに対して、1960年頃の中国の人口は6億~7億人であったと推計されるから、現在の半分以下だ。つまり、大躍進・文化大革命の犠牲者8000万人(西側推計)は、現在でいえば2億人に迫る規模ということである。日本の全国民を2回「抹消」するほどのスケールだから想像を絶する。

by Gettyimages

2つの惨劇のうち、後者は「毛沢東崇拝」という政治的色彩が強かったが、前者は日本でいえば「富国強兵」、あるいは「鉄は国家なり」という言葉に代表される「経済強化」を目的としていた。

もっとも、大躍進も欧米先進国やソ連などと経済的に対等の立場になりたいという毛沢東の「個人的野心」が原動力であり、その「個人的野心」を満たすために政策が遂行されたため、惨劇を招いたのだ。

当時は、「鉄は国家なり」という言葉が健在で、鉄鋼の生産量が国力を計る指標(少なくとも毛沢東はそう思っていた)であったため、鉄鋼生産の増大が至上命題であった。

しかし、1972年の日中国交回復の後、1977 年に中国政府より大型一貫製鉄所建設への協力要請を受けて、宝鋼建設プロジェクトが新日鉄(日本製鉄)の力を得て起工したのが翌1978年である。

したがって、大躍進当時の中国に近代的製鉄所など無かったと言える。大概の場合は、畑や田んぼをつぶして掘っ立て小屋を建て「製鉄所」と称していたのだ。そして、たたら製鉄など古代に遡る製法で細々と「製鉄」していたのだが、それでは間に合わない。そこで、生活必需品である鍋・やかん、さらには農作業用の鋤・鍬まで溶かして「製鉄」していたのだ。

もちろん、そんなことをしていたら食糧生産が減少する。しかし、毛沢東を恐れる共産党幹部たちは数字を偽って耳障りの良い報告をしていたため、毛沢東自身は「豊作で余った作物をどうしよう?」と悩んでいたと伝えられるほどだ。

そして「ネオ毛沢東」路線を突き進む習近平政権でも同じことが起こるような気がする……。1978年に改革・開放が始まって以来、40年以上「富国強兵」が推進されてきたが、その間農業は軽視され、農村が荒廃してきた。

現在、大躍進の頃の2倍以上の国民を養わなければいけない上に、食糧自給率が低下しているというのが西側推計である。

10月18日公開「インフレ&中国発不況-スーパー・スタグフレーションが襲ってくる!」、10月2日公開「これは習近平の経済自爆戦術か、行き着く先は巨大な北朝鮮」などで、経済面での中国の暗い見通しを述べてきた。

 

経済面での駆け引きでは確かに習近平氏の「自爆戦術」は有効な面があると思うが、「食糧安保」の面を考えたらどうであろうか? 世界各国からの借金を踏み倒し、軍事的緊張が続けば、「国民を養う生命線」である「食糧輸入」が極めて難しくなり、習近平政権崩壊のきっかけになるかもしれない。

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