2021年10月28日、スイスで行われたジュネーブ国際音楽コンクールのチェロ部門で、上野通明(みちあき)さん(25)が、日本人初となる1位に選ばれた。音楽コンクールでの日本人の受賞といえば、つい先日も反田恭平さんと小林愛実さんが、第18回「ショパン国際ピアノコンクール」でダブル入賞を果たしたばかり。時期同じくして、世界の一流音楽家を輩出するコンクールで、快挙を成し遂げたこの3人に共通すること、それは、桐朋女子高等学校の音楽科の同窓生であることだ。ちなみに、桐朋女子高等学校は普通科が女子高、音楽科は共学である。

Photo by iStock
-AD-

受験生全員合格? の秘密

3人はそれぞれ、上野さん(25)95年11月生まれ、反田さん(27)94年9月生まれ、小林さん(26)95年9月生まれと、ほぼ同じ時期に同校に通っている
高嶋ちさ子、小澤征爾など、日本を代表する音楽家を輩出してきた桐朋女子高等学校は、また、年齢に応じた世界最高水準の音楽教育を目指す「子供のための音楽教室」を全国で開催していることも、その世界ではよく知られている。国内で音楽科コースを目指す子供たちのほぼ全員が「子供のための音楽教室」、通称「音教」で学びながら、小学校、中学校を経て、反田さん、小林さんのように、桐朋女子高等学校音楽科を受けるのだ。

そんな音楽科きってのトップ校だが、学校のウェブサイトを見ると、受験者数と入学者数がほぼ一緒、不合格者はほとんど出ていないことに気づく。けれども、この数字だけを見て、「受ければ、誰でも入れる」と飛びつくのは、考え物だ。というのは、桐朋の志望者は全国28ヵ所の「音教」のいずれかに、ほぼ全員が所属しており、音楽科の合格ラインは、指導する側はもちろん、本人や保護者もよくわかっているからだという。

つまり、受験前の段階で、受験生の実力は織り込み済みなのだ。もちろん合格の見込みがどうであれ、誰もが受験することは可能だ。だが、音楽科の受験日は3日間にも及ぶ。しかも都内の私立高受験日程の終盤だ。受けるということは、ほかの学校を受けることができない可能性も高くなる。心理的に相当厳しく、そうした事情から受験者数もしぼられるのであろう。

こうして全国から集まった選りすぐりの精鋭たちが、1学年50名前後の(チェロにいたっては、1学年数名という)狭き門をくぐる。

では、こうした逸材を集め、育てる桐朋女子高等学校とは、どんな学校なのか。
同校卒業後、桐朋学園大学音楽学部に進み、チェロ科首席卒業。泉の森チェロコンクールにて史上初全部門で優勝し、現在はチェリスト、作編曲家として活躍する小林幸太郎さんに、話を聞いた。

小林幸太郎さん