2021.11.05
# 格差・貧困

増加する「地元志向の若者」は本当に食っていけるのか?

高卒で地元就職のリアルと地域間格差

「地元志向の若者が増えた」と言われて久しい。

しかし、それなり以上の規模の地方都市か大手メーカーの工場のある地域でもなければ、大卒では公務員、教員、金融機関くらいしか安定した勤め先の選択肢がなく、高卒では地元の企業に勤めても最低賃金すれすれの給料であることはざらだ。それでも「地元志向の若者が増えた」のはなぜなのか。そこにある課題を解決する方策はあるのか。

『地域で暮らせる雇用』(旬報社)を著した阿部誠・大分大学名誉教授に、地方の高卒就職者を取り巻く環境について訊いた。

[PHOTO]iStock
 

地方の暮らしやすさ向上と都市への憧れの低下

――高卒で就職希望者は2019年3月卒では17.8%。そのうち県内就職者が82.3%、県外就職者は18.7%と、地元就職希望者が多いとのことですが、かつてと比べて都市志向でなくなってきた背景は何でしょうか。

阿部 いくつか理由は考えられます。高卒に限らず大卒でも地元の大学への進学・就職が増えていますが、よく言われるのは「少子化の影響で親との関係で地元に残る」というものです。

また、都市部の雇用環境によって人口流出が影響を受けることがわかっています。都市部での就職が厳しいときには地方から出なくなる傾向がある。

それ以上に重要なのは、雇用が地方でも増え、生活環境が整備されたという変化が背景にあると思います。かつては地方に雇用機会がほとんどなかった時代もありましたが――もちろん今でも地方都市と中山間部などで差はあるものの――最近では「量」だけで言えば、働く先は以前より増えました。また、クルマでショッピングモールに出向けば買い物に不自由せず、映画鑑賞など文化的なことにもアプローチできるようになった。こういうことを前提に主体的に「地方で暮らす」ことを選ぶ若者が現れたのだろうと見ています。

さらに言えば、かつて経済成長していた時代には「都会に出て一旗揚げる」「大都市の第一線で活躍する」モデルが理想として存在していました。しかし、成長がとまった今は都会に出ても成功することは難しいとみんなわかっている。都会に出ればいい暮らしができるというイメージもない。このように都会への憧れが少なくなってきたことが「わざわざ出るまでもない」ということにつながっていると考えられます。

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