自民党「圧勝」できなかったのは岸田首相の「ブレ」のせい…降ろしてはいけなかったスローガン

所得倍増「できる」と言っておけばよかった

衆院選の当選者数は、自民251、立憲民主87、公明28、維新36、国民民主8、共産9となった(NHK開票速報より、1日午前1時現在)。形式的にいえば、自公で過半数を上回ったので、自公政権は国民の信任を得たといえる。また、議席数を減らしたとは言え絶対安定多数も上回ったので、「大負け」ではない。

岸田政権で自民党は「新装開店」したが、岸田首相が思ったほど人気が出なかった。一方、立憲民主は自衛隊違憲・日米安保反対の共産党と組んだ結果、一定の選挙戦術の範囲で成功した。ただし、自民党で物足りない人の受け皿にはならず、保守系の維新が躍進することになった。

「ご祝儀」的な勝利は得られなかった岸田首相/photo by gettyimages
 

筆者は、青木率(内閣支持率+政党支持率)に基づく総選挙予測を1、2週間前から行ってきたが、本コラムでも、「総選挙の自民党獲得議席を予測すると、240議席をやや下回る」、「自民党は40議席程度減少させる可能性があるが、それらは立憲民主と日本維新らの議席増になるだろう」とした(10月25日「立憲民主、公明、共産の「お花畑」議論にもううんざり…大切にして欲しい「リアルな議論」 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88609)。

自民党は議席数を減らしながらも単独過半数を超えたが、多くの大物議員が小選挙区で負けるなど、「勝った」とはとても言えない。筆者なりに理由を考えれば、岸田首相の「ブレ」がこの事態を招いた。

岸田首相は、総裁選において、「所得倍増」、「成長と分配の好循環」を主張していた。しかし、総選挙では「所得倍増」を取り下げた。一方、立憲民主党らが「分配なくして成長なし」というのに対抗して、「成長なくして分配なし」といった。

「成長なくして分配なし」はもっともだが、その前提になっている「所得倍増」を取り下げてはいけない。

政治的にいえば、総裁選の政策のまま、総選挙を戦うべきだ。総裁選での「成長と分配の好循環」は成長と分配のどちらが先か曖昧な便利な言葉だ。相手に応じて「成長なくして分配なし」といってもいい。しかし、「所得倍増」をおろしてしまってはいけなかった。

岸田首相は、実は「所得倍増」はできるはずないと、周囲に言われたのだろう。「聞く力」を標榜する岸田首相は、それを本当に「聞いて」しまった。60年ほど前の池田政権でも「所得倍増」はできないと批判されたが、政治スローガンはおろさなかった。政治ではできないことを「できる」と言ったほうがいいのだ。

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