個人認証厳格化の時代にそぐわぬ2つ以上の氏名運用

日本で最大の口座数を誇るゆうちょ銀行は、旧姓使用を一切許可していません。厳密に法的根拠のある氏名でしか口座を持つことが許されないため、免許証に旧姓併記しても口座開設は認められません。同行で「旧姓は偽名と同じ」と言われてペーパー離婚を決意した方もいるほどです。

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私たちがクラウドファンディングを実施するため、私がゆうちょ銀行で団体口座を開設した時も、社会的にはまったく知られていない戸籍姓での登録を余儀なくされました。

2021年9月、ゆうちょ銀行から「取引目的等の確認のお願い」が来ました。「国際社会においてマネー・ロンダリングおよびテロ資金提供対策」のためとして定期的に口座の目的、法人の実質的支配者の素性を特定しているとのこと。たしかに、同一人物が「投資や不動産購入は戸籍姓」「海外送金は旧姓」といった運用が可能になると、犯罪に使いやすくなるでしょう。望まない改姓をした者にはつらいものの、信頼を預かる金融機関の立場は理解はできます。

ゆうちょ銀行から送られてきた法人口座の目的や法人の実質的支配者の確認書類
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口座の本人確認を確実に行うゆうちょ銀行
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旧姓使用は「コストがかかって混乱が起こる」

ほかの銀行はどうでしょう。一部メガバンクは、これまた一部、「旧姓を仕事上で使っている実態を名刺や業務メールなどで証明できた顧客」に対し、旧姓口座の新規開設を認めています。それも「申込者=戸籍氏名/使用者=旧氏名」というイレギュラーな運用です。しかしそのような対応をしていることを公式サイトで説明していません。「窓口で相談を」とのみ記載されており、実際には多くの改姓者たちが窓口で旧姓の口座開設を断られています。

銀行のシステム担当者が寄稿した記事を見てもわかる通り、金融機関にとって旧姓使用とは「数億円かけて何にも収益にもつながらないシステム改修をした結果、世界的な顧客情報を混乱を招くもの」でしかありません。

そのため銀行口座のみならず、保険・融資の契約、投資、特許、登記名義も、旧姓はほぼ認められません。旧姓を免許証やマイナンバーに併記できても、「戸籍氏名の横にただ昔の名字が書かれているだけ」で、用をなさないことが多いのです。