極端なダイエットをきっかけに摂食障害に陥ったことがある。摂食障害は、拒食や過食など、食べることに症状があらわれる病だ。そんな経験をオープンにして活動していると、SNSで摂食障害や体型に悩む方からメッセージをもらう事がよくある。現実世界では誰にもつらさを打ち明けられず、ひっそりと孤独に悩んでいる人が実はかなり多いのではないかと思う。

オンラインで山田医師取材中の吉野なおさん。

では、なぜ多くの人が摂食障害に陥ってしまうのだろう。医療者から見た摂食障害とは、どのようなものなのだろう。過去に摂食障害にかかり苦しんだ経験とともに、兵庫医科大学病院の精神科医・山田恒医師に「摂食障害の疑問」についてトコトンお話を伺った。

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メディアが作り出した美意識の根深さ

私自身も摂食障害に長く悩んだ経験があるが、人が摂食障害に陥ってしまう背景には、どんなことがあるのだろうか。

「やっぱり、みんな痩せたい気持ちがあるからではないでしょうか。世の中には、痩せていると女性は幸せになれるという幻想の価値観があるんですよね。その背景にはマスメディアや商業主義の問題があるのですが、そういった価値観がずっと作られ続けている

病院に訪れる中高生の女の子が、『雑誌のモデルの体重を見て痩せなきゃと思った』と言うので、どうして痩せたいの?と聞くと『痩せたら綺麗になってハッピーになれると思う』、と答えるんです。

テレビもなかった50年前のタヒチでは、ふくよかなことが富と美しさの象徴で摂食障害になる人が居なかった。でも、島にテレビが入って西洋文化の影響を受け、“美しさの基準が痩せていること”に変わっていく中で、摂食障害になる人が現れはじめたという歴史もあります。そんな風に日本人の女性も社会が作り上げた美意識にすごく影響を受けています。

世界各国の女子大生を対象にしたある調査では、日本人の女子大生は平均BMIも低く肥満率も低いのに、”自分は太っている”と答える割合が調査対象の国の中で最も多く、全体の約7割もの人がダイエットしている状況だったという報告もあります」(山田医師)

出典/Wardle J et al. Int. J. Obes., 30:644-651, 2006(永田利彦、山田恒改編)
出典/Wardle J et al. Int. J. Obes., 30:644-651, 2006(永田利彦、山田恒改編)

たとえ標準体重であっても「痩せたい」「痩せなきゃ」と言う人は多い。でもその感覚は、生まれたばかりの赤ちゃんには赤ちゃん自身はもちろん、周囲の意識としても存在しない。むしろムチムチの頬や体つきが可愛いと言われる。太ることに対して嫌悪感や焦燥感を覚えたり、より痩せていることに憧れを持つのは、人間としての本能ではなく、成長過程での環境や文化、社会影響が関係し、特に女性にとって、「美しさ」と「幸せ」は非常に親和性が高いイメージが作られている気がする。だからこそ「キレイになろう」というメッセージを掲げるダイエット情報は、魅力的に感じられるのかもしれない。