77億円分のサケやウニが大量死!北海道を襲った「謎の赤潮」の正体

2種類の衛星画像が示すその動向とは

北の海を襲った異変

北海道でこの秋、海に異変が起きている。

いまが旬の秋サケが定置網の中で相次いで息絶え、高級水産物であるエゾバフンウニの大量死も確認された。被害金額は10月22日現在で約77億円にのぼる。これとは別に、つぶ貝やナマコなどに最大で90億円程度の被害が見込まれるとの報告もあり、漁業被害の総額は160億円を超すおそれがある。

この深刻な事態は、9月中旬から北海道の太平洋沿岸で続く大規模な赤潮が原因とみられている。赤潮は、プランクトンが増殖して海水の色が変化する現象だ。必ずしも赤い色にはならず、原因となるプランクトンの種類によって、褐色や緑色など、さまざまな色になる。

調査の結果、今回の赤潮では、これまで日本の海で赤潮を起こしたことのない種類の植物プランクトンが、大発生していたことが明らかになった。いったい何が起こっているのか。

2万匹超のサケと2300トンのウニが死滅

大規模な赤潮が発生したのは、日高沖から根室沖にかけての北海道の太平洋沿岸だ。

集計によると、サケは2万2700匹、ウニは約2300トンが死滅した。このほか、サクラマスやクロソイなどの被害も報告されている。

定置網の中で死んでいたサケは、通常なら赤いはずのエラの部分が、白く変色していた。 

【写真】定置網で死んだサケ定置網で死んだサケ(北海道釧路町役場提供)

「新顔」の有害プランクトン

今回、北海道沿岸に押し寄せた赤潮の主役は、意外な種類だった。

調査の結果、日本でこれまで赤潮発生の報告が存在しなかった「カレニア・セリフォルミス」(Karenia selliformis)という種類であることが判明したのだ。

微細藻類の系統分類学が専門で、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授の岩滝光儀さんによると、赤潮が起きた海域からはカレニア科の植物プランクトンが複数種みつかったが、たとえば釧路沿岸のサンプルでは、検出された細胞数の9割以上がこの「セリフォルミス」だったという。

【写真】カレニア・セリフォルミスカレニア・セリフォルミス(東京大学大学院農学生命科学研究科・岩滝光儀准教授提供)

カレニア・セリフォルミスは平たい饅頭のような形で、サイズ(細胞長)は40~45マイクロメートル。クルクルと回転しながら海中を泳ぎまわる。

ニュージーランド南島沖で発見され、2004年に新種として報告された、どちらかといえば「新顔」の有害植物プランクトンである。

中国やロシアでも存在確認

日本近海でもプランクトンネットで採集された事例はあったものの、赤潮の発生にまでいたったケースは今回が「国内初」となるセリフォルミス。海水中の環境DNAによる調査では、中国近海でもその存在が報告されており、これまでにチリやチュニジア、クウェートなどで赤潮を発生させている。

最近では、ロシアのカムチャツカ半島沿岸で、2020年の9月から10月にかけて発生した赤潮からもセリフォルミスが見つかっており、ウニやタコ、貝類に大きな被害が出た。当初は、海の生きものたちがなぜ死んだのか理由がわからず、現地では「有毒なロケット燃料が海に流れ込んだのでは」といった憶測も飛び交ったという。

関連記事