被害をひとりで受け止めなければならない現状

調査では他にも、ハラスメントが起きやすい構造や被害を言い出せない背景などがわかってきましたが、私が調査を通じて注目したのは、こういった被害を一人で受け止めている女性の議員が多いという点です。

国会議員の場合は国が人件費を負担する公設秘書制度によって、秘書を3人置くことが認められていますが、地方議員の場合はそういった制度はないため圧倒的多数は秘書がおらず、市民から来る要望や問い合わせに全て議員自身が対応する場合がほとんどでした。そのため、第三者が介入することなく、受けたハラスメントを全て1人で背負い、直接対応しなければならない状況に置かれていたのです。

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実際に被害を受けている議員たちの声を聞く中で、重要なのは被害を受けた時に相談できる相手がおり、1人で問題を抱え込まなくていい仕組みがあること、議員が攻撃を受ける可能性がある場合は間に入って被害を抑える役割をするチームが存在し、議員ひとりで対応しなくてすむことだと考えました。しかし、政党によってハラスメント対策状況は異なり、また、地方議員は無所属も多いため、相談場所すらないという現状でした。

政治塾などをはじめとする女性立候補者を増やすための活動はいくつかありますが、実は「議員になった女性をサポートする団体」というのはほとんどありません。そこで、ないのであれば自分で作ろう、と思って2021年5月に立ち上げた団体がStand by Women(スタンド バイ ウィメン)です。具体的なサポート内容は、研究データや調査結果を生かした女性議員・候補者のサポート活動や、ハラスメント対策講座の提供等です。現在は特にオンライン・ハラスメントのサポートを中心に行っており、1人の議員につき4人チーム体制でSNSを監視したり、投稿内容の相談を受けたり、攻撃を受けた場合に一緒に対応したりしています。

参加メンバーは学生や社会人、研究者など、「女性議員をサポートしたい」という思いで行動してくれてる方が多いです。まだ立ち上がったばかりの活動ですが、次の2023年の統一地方選挙を目標に支援体制を整え、メンバー数も増やしていきます。また、日本においては女性議員に対するハラスメントの問題は知られ始めたばかりなので、まずはこういった現状があることを可視化させることが重要だと考えています。誰でも政治に参加できる環境を作るためにも、ハラスメントは「政治に参加するためのコスト」ではなく、「対処されるべき問題」として認識されるべきです。そのためにも、引き続き声をあげていこうと思います。

ハラスメントは、誰にとってもあってはならないこと。まして、ハラスメントによって政治家になることを躊躇するような環境があっていいはずがない Photo by iStock
【プロフィール】
濱田真里 Mari Hamada
お茶の水女子大学ジェンダー研究所 東アジアにおける政治とジェンダー研究チーム共同研究者/Stand by Women代表
お茶の水女子大学大学院にて女性議員に対するオンライン・ハラスメント研究を行い、卒業後、研究内容を活かして2021年に女性議員・候補者のサポート団体「Stand by Women」を設立。

お茶の水女子大学ジェンダー研究所 東アジアにおける政治とジェンダー研究チーム共同研究者として「女性議員に対するハラスメント」をテーマに研究を継続中。第8回澤柳政太郎記念東北大学男女共同参画奨励賞受賞。2021年度「女性リーダー支援基金~一粒の麦~」採択メンバー。