2021.10.29
# 学校・教育

「とりあえず」で就職を決める若者たちが、実はむしろ「合理的」であるといえるワケ

明確な「夢」「やりたいこと」なんかなくてもいい
飯田 一史 プロフィール

「夢」「やりたいこと」が求められる背景と問題点

――逆に「とりあえず」志向の研究から見えてくる、「夢」「やりたいこと」にやや偏重している日本のキャリア教育や就職指導の問題点はなんでしょうか。

中嶌 日本のキャリア教育は1999年に中央教育審議会が提唱したことに始まり、各学校が独自の歩みを遂げてきたように思いますが、「やりたいこと」「なりたい自分」に“ひとつの正解”を求めないことが重要です。大学でも「大学4年間でなりたい自分を見つけましょう」と言っていますが、探し当てられる保証はありません。

また、学生時代の価値観はあくまで限定的な知識しか持たない若いころの価値観なのに、その後も変わらないことを想定してしまっている点には問題がある。大学教育のなかで自己分析を通じて思い描いた職務内容やキャリアと、実際の就労現場とが乖離していた場合には、早期離職につながる面もあります。

また、学校で就活を指導する立場からすると、各人の志望度が高いところに入れてあげたいと思うからこそ「逆算すると、このくらいの時期に準備が必要になる」と思い、それが「早くやりたいことを見つけなさい」と言うことにつながっています。

つまり、指導しやすい就職プランに乗ってくれたほうがある意味ラクなんですね。志望する進路が曖昧だと指導しづらいわけです。

加えて、たとえば公務員試験に何人合格しました、卒業生のうち何%が公務員になりました、就職しましたと対外的に発表され、結果が求められることも早期に志望を決めさせたがることと関係していると思います。

[PHOTO]iStock
 

――ゴールを決めてもらったほうが都合がいいから、夢ややりたいことを求めていると。

中嶌 日本のキャリア教育に限らず、キャリア理論においても多かれ少なかれそういうゴール設定を前提にしている部分があるように思います。

たとえばダグラス・ホールが提唱した「プロティアン・キャリア」は最新のキャリア理論だと言われており、「とりあえず」志向はそれと重なる部分もあります。プロティアンは変化の激しい時代にキャリアを自律的かつ柔軟に形成していこうというものですから。ただ、やはり最終的には心理的な成功を目指している。

一方「とりあえず」志向では夢や成功を目指しているとまではいかない。「成功」と言うと重すぎる。それに、夢を達成したら人生終わりではないですよね。「とりあえず」“好い加減”で日々の実践・行動していく。そこから考え、感じたことを大事にしていくというやり方の自覚的なキャリア形成が「とりあえず」志向ではないかと思っています。

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