ヘタな軽口はたたけない相手

私は試合にノーパンで臨むジンクスがあり、雑談中に話の流れから、早田ひな選手に「女子はノーパンなんてありえないよね」と軽口をたたいた。セクハラだと言われかねない御時世だから、こういう冗談を言う時には慎重に相手を選ぶ(ちなみに伊藤選手にはこんな冗談は絶対に言わない)。

混合ダブルスを組むことになってから、彼女と一緒に練習する時間が増えた。もしダブルスを組んでいなければ、彼女と口を利く機会はまったくなかったと思う。伊藤選手(20歳)や平野美宇選手(21歳)とは、10歳以上年齢差がある。石川佳純選手(28歳)とは年齢が近いし、10年以上一緒にナショナルチームで卓球をやってきた。ご飯に誘ったり卓球の話をする機会は、石川選手のほうが圧倒的に多い。

東京五輪女子団体では石川佳純選手、平野美宇選手と共に出場し、銀メダルに Photo by Getty Images
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準々決勝で「奇跡の大逆転」、そして…

すでに述べたように、私たちは不可能を可能にする奇跡の大逆転によって、混合ダブルスの決勝戦に進んだ。決勝の相手は卓球王国・中国だ。

第1ゲームと第2ゲームは、5-11、7-11と中国に連取された。伊藤選手が積極的に攻めることが私たちのペアの強みなのだが、彼女の調子が上がらない。この情況の中で私は何ができるか懸命に考えた。

私が伊藤選手だったら、凹んで動揺するところだ。なのに2ゲーム連取された後の打ち合わせで、彼女はミスを意に介することなく「次はこうしてみようか」とポジティブに提案していた。しかもタメ口だ。こういう鋼のメンタルが、彼女の強さなのだと思う。

このままでは、決勝戦で何もできないまま終わってしまう。それだけは絶対に嫌だった。そこから戦術を変えて慎重さを排し、もっと積極的に攻めることにした。それが功を奏して、第3ゲームから第5ゲームまで日本が連取した。第6ゲームは中国に取られ、勝負は最終ゲームにもつれこむ。

コミュニケーションを絶やさなかった2人 Photo by Getty Images