まるでマンガのような大逆転勝利

まるでマンガのような信じられない攻防戦だった。なんと最終第7ゲームで、私たちはマッチポイントを合計7回も跳ね返したのだ。一時は2-9まで点差を広げられていた負け試合が、最後は16-14でフィニッシュした。私たちは卓球史上に残る大逆転勝利をつかんだのだ。

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私たちは「最終ゲームは0-0からこうしよう」から始まり、「9-9までもつれたときにはこうしよう」と長いスパンで戦略を考えていた。だが2-9まで追い詰められてしまうと「3-9になったらこうしよう」「4-9になったらこうしよう」と考える余裕なんてまったくない。流れに身を任せながら、目の前の1本を取りにいくことしか考えられなかった。一進一退の攻防になってからも、「目の前の1点を取りに行く」という気持ちは一緒だった。試合の勝敗を考えるよりも、まずは次の1本を必死で取りに行く。その次の1本も必死で奪う。そうやって刹那的に1点ずつ戦っていたら、点数が縮まって勝利にたどりつけたのだ。

私と伊藤選手よりも、相手のドイツチームのほうがスコアにとらわれていたと思う。どう考えても負け試合なのに、水谷隼と伊藤美誠は目を血走らせ、絶対に試合をあきらめない。そんな私たちの鬼気迫る追い上げは、相手に対して不気味なまでのプレッシャーを与えたはずだ。

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頭の中でこだましていた「SLUM DUNK」の名言

井上雄彦さんの名作『SLAM DUNK』に「あきらめたらそこで試合終了だよ」という有名な言葉がある。バスケットボール部顧問の安西先生は、勝利をあきらめかけていたバスケ部員にこの言葉を投げかけた。

どれほど追い詰められたとしても、絶対にあきらめてはいけない。あきらめた瞬間、そこで試合終了。オリンピックは終了だ。熱戦の渦中、私の頭の中で安西先生の言葉がガンガンこだましていた。

「SLUM DUNK」愛蔵版6巻69話「WISH」にその名言が!

◇決勝での伊藤選手については「東京五輪卓球混合Wで金メダル!水谷隼が語る「決勝の伊藤美誠はスーパーサイヤ人だった」」で詳しくお伝えする。

打ち返す力 最強のメンタルを手に入れろ
5歳のころから卓球をはじめ、小学生のときは連続で全国優勝。14歳にして海外に卓球留学もした水谷隼さん。自身が競技生活を続け、成功するそのメンタルはどのように育まれたのか。日本の卓球競技の向上に大きく貢献した水谷さんの名言溢れる一冊。
「第1章 頂点に立つために」「第2章 勝利からの逆算法」「第3章 お金が人間を自由にする」「第4章 成果を掴む人間関係」「第5章 茨の道を怖れない」「第6章 環境の変化に立ち止まるな」「第7章ビジネスの悩み「水谷流」ならこう対処する」