まずは目の前の1本を100%取りにいく

スコアが2-9だと思えば、誰だって勝利をあきらめてしまう。「まずは目の前の1本を100%取りにいこう」という気持ちにグッと切り替えた。

すると2-9の差が3-9、4-9、5-9……と1点ずつ狭まっていったのだ。点数が近づいていくたび、「いいよ、1本ずついこう」「この調子だ。まだまだいけるよ」と連呼し続ける。卓球は1点1点の集積体なのだ。

-AD-

ようやく伊藤選手も、私が言っていることの意味をわかってくれたらしい。「あれ、ジュン(*幼少時代からつきあいが長い伊藤選手は、私のことを「ジュン」と呼んでいる)の言う通り、この試合、私たちいけるんじゃない?」と思ってくれた。

2-9だった得点差は、2人の踏ん張りによってとうとう6-9まで詰まった。この頃には伊藤選手の心は完全に私と同じだった。

ドイツ選手だって、準々決勝で逆転負けを喫してメダルを失いたくはない。6-9から1点返され、6-10に引き離されてしまった。マッチポイントだ。あと1点ドイツチームに取られれば、私たちは試合に負けてしまう。

ふざけるな。こんなところで負けてたまるか。火だるまになった気持ちで戦った。

Photo by Getty Images