慰謝料ならば払えない
「いい加減、解放してくれよ!こうやって謝っているじゃないか」
男性はなかなか食い下がらない啓介さんにしびれを切らして逆ギレしてきたそうですが、そもそも啓介さんは謝罪を望んでいません。
なぜなら、あまりにも薄情すぎる男性が口先で詫びたところで内心、本当に悪いと思っているかどうかは怪しいからです。それでいて、すでに精神的にまいっている啓介さんにとって男性の腹のうちを探るのもまた大きな負担です。
啓介さんは妻と別れるつもりはありません。しかし、「妻の裏切り」のショックで拒食症や不眠症などの症状に悩まされています。そこで、筆者は事前に「診断書をもらえるようなら、もらっておいてください」と助言しておきました。啓介さんは男性に対してその診断書を見せつけたのです。
何より被害者は加害者の言葉など本当は一言も聞きたくないのです。男性が逃げたい一心で口走った「悪かった」という言葉は気休めにもなりませんが、男性は啓介さんの正論すぎる正論が頭にきたのか。今度は啓介さんを挑発してきたのです。
「何が目的なんですか。慰謝料なら払えませんよ。カネないですから」
精神的苦痛の対価を金銭という形で弁償するのが慰謝料ですが、男性はこのように無神経な言葉を並べ立てたそうです。
男性いわく、彼の勤務先は飲食業向けの店舗開発。しかし、長引く新型コロナウイルスの影響で飲食業の新規出店は大幅に鈍化。会社の業績不振により、今までは月収の2~3ヵ月分支給されていたボーナスは支給停止になっているそうです。