2021.10.27

経産省が、台湾の半導体大手TSMCに「日本での工場建設」を"懇願"してきたワケ

追い込まれる日本
加谷 珪一 プロフィール

しかも米国は安全保障の観点から、米国内に半導体工場を積極的に建設するようTSMCに要請を行っている。現時点において、全世界における半導体製造の約7割が台湾で行われており、台湾海峡で有事が発生した際には、半導体のサプライチェーンに深刻な影響が及ぶのは確実である。

米国はリスク分散を図る必要があり、一連の事情に配慮したTSMCは米国アリゾナ州に最先端プロセスの工場建設を決めた。経済産業省はこうした動きをうまく利用し、TSMCに対して日本進出を再度要請。とうとうTSMC側が了承し、今回の発表となった。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

もっとも米国とは異なり、日本はTSMCにとって大口顧客ではないため、日本側からの一方的な「お願い」にならざるを得ない。同社が日本に建設するのは、回路線幅が22ナノメートルと28ナノメートルの製造ラインで、一世代前の古い技術である。加えて日本政府は、TSMCに対してかなりの支援を行うとみられ、岸田政権は2021年度補正予算に同社への支援を念頭に数千億円の予算を確保する。

今回の工場建設には政府が支援すると同時に、ソニーやデンソーも出資することが決まっている。新工場はソニーの半導体製造拠点の近くに建設される予定で、新工場で製造された半導体はソニーやデンソーなど国内メーカーが購入すると思われる。TSMCにしてみれば、巨額の建設資金について支援を受けることができ、古い技術であることから日本に技術が流出する心配がなく、しかも製品を買ってくれる相手が最初から決まっているという破格の好条件といってよいだろう。

関連記事