2021.10.27

経産省が、台湾の半導体大手TSMCに「日本での工場建設」を"懇願"してきたワケ

追い込まれる日本
加谷 珪一 プロフィール

同省はTSMCに日本国内に製造拠点を作ってもらえるよう要請を繰り返したが、話は簡単には進まなかった。台湾は半導体産業が高度に集約しており、高い技術を必要とする最先端プロセスの工場は台湾に建設した方がよいに決まっている。日本に最先端プロセスの工場を建設すれば、台湾から日本に技術が流出する可能性もあるので、当然、TSMC側は警戒する(一昔前までは、日本が海外に進出する際、技術が流出するのではないかと懸念する声が上がっていたが、今や状況は完全に逆転した)。

一方でファウンドリー企業は、それほど高い技術を要しない旧世代のプロセスについても、製品ニーズがある限り、製造拠点を維持する必要がある。旧世代のプロセスを用いた工場を誘致するという選択肢もあるが、こうした製造拠点はコスト要求が厳しいので、日本は適地とは言えない。日本は中国や米国などと比較すると半導体の購入額が小さく、TSMCにとって大口顧客とは言えず、専用に工場を建設するインセンティブが小さいというのが現実だ。

 

米中対立が風向きを変えた

一時はTSMCの日本誘致は暗礁に乗り上げたと見られていたが、思わぬ神風が吹いた。コロナ危機をきっかけとした全世界的な半導体不足と米中対立による経済安全保障である。

コロナ危機の発生でテレワークが普及したことで、全世界的にパソコンなどの需要が急拡大した。加えて、コロナ後の社会ではビジネスのIT化が急激に進むとの予想から、各国企業がIT投資を加速。その結果、全世界的に半導体が極度の品薄になるという異常事態が発生した。

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