提供:徳島県

SDGs先進県として走る徳島。これを牽引する飯泉嘉門県知事と四国大学短期大学部・加渡いづみ教授に、エシカル消費の徳島モデルについて伺いました。

●お話を伺ったのは…
飯泉嘉門 Kamon Iizumi
大阪府生まれ。東京大学法学部卒業。1984年自治省に入省。総務省自治税務局税務企画官、徳島県商工労働部長、同県民環境部長を経て、2003年5月に同知事就任(現在5期目)。第13代全国知事会会長。自然エネルギー協議会会長。

加渡いづみ Izumi Kado
徳島県生まれ。四国大学短期大学部教授。専門はライフプランニング。徳島県消費生活審議会会長、徳島県働く女性応援ネットワーク会議会長などを兼任。2019年「とくしまSDGs未来会議」を設立。

“世界最速”と“田舎暮らし”を
同時に叶えてくれる環境

(左)加渡いづみ教授、(右)飯泉嘉門知事。

――この数年で徳島県のサステナブルなイメージは、ずいぶん定着してきたように感じます。それには、どんな背景があるのでしょうか?

飯泉嘉門(以下、飯泉):まずは、どこよりも早く県内全域に光ブロードバンド環境を整備したことにあると思います。着手したのはテレビ放送の地デジ化の頃でした。当時、デジタル放送に変わると徳島では、3チャンネルしか映らなくなってしまう。そこで、市町村と協力し、全地域に光ファイバーを張り巡らせました。今や美波町や神山町を中心にIT関連企業などのサテライトオフィスが次々に進出しており、SDGs8番目の目標「働きがいも経済成長も」にもつながっています。

加渡いづみ(以下、加渡):県外からの移住が増え始めたのは東日本大震災がきっかけでしたけど、このコロナ禍で働き方が大きく変わって、さらに顕著になっているように感じますね。

飯泉:IT企業の方たちが口を揃えて「徳島の通信回線の速さは世界一だ」と言うほど東京をしのぐネット環境がありながら、周りを見渡せば大自然が広がり新鮮な食材にも事欠かない。こんなにいい環境なら子どもを連れて行きたいが、住民票を異動させないと転校ができない。そこで、文部科学省の仕組みとしてあったけれどほとんど使われていなかった「区域外就学制度」を活用して、徳島と都市部の2つの学校を行き来できる新しい学校のかたちである「デュアルスクール」を始めました。

――サテライトオフィス勤務などに応じて、子どもの学校も自由に決められるということですか?

飯泉:そうです。徳島が取り入れたことで、文部科学省が全国に「デュアルスクールを活用しましょう」という通知を出しました。徳島方式が「ジャパンスタンダード」になったひとつです。

加渡:子どもにとっても、地方と都市部に同級生ができて異なる環境を経験できるのは、大きな学びになるでしょうね。

飯泉:さらに、光ブロードバンド環境を活かした“ワーケーション”では、単に自然に囲まれて仕事をするだけではない、徳島ならではの“アワ(阿波)ーケーション”も展開しています。

――今でこそ二拠点生活は珍しいことではなくなりましたが、当初、移住者と地元の人たちとの間に摩擦などはなかったのでしょうか?

飯泉:一般的に中山間地域はよそ者が入りづらいイメージがあるかもしれませんが、本県には、四国八十八ヶ所霊場の“お遍路“があり、外からさまざまな人たちがやってくるのがあたり前でしたから、移住者も自然と受け入れられました。

加渡:お遍路に来る人たちを迎え入れ、食べものや飲みものでもてなす“お接待”の文化や精神も古くからありました。これは私の専門分野であり、徳島が推進する“エシカル消費”にも通じていると思います。

“エシカル消費”は、
徳島の県民性そのものだった

――あらためて、エシカル消費とは、どんな消費行動なのでしょうか?

加渡:エシカル消費を日本語では倫理的消費とも呼びますよね。「環境に配慮した消費」「働く人の権利や幸せを守る消費」「地域を元気にする消費」。この3つの「消費」を柱に、社会的課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動しましょうという意味で、SDGsでは12番目の目標「つくる責任 つかう責任」にあたります。ですが、消費とはそもそも“利己的”なものですよね。私は、そこを曲げる必要はないと思っているんです。自分を満足させるものであることを前提に、“利他的”な視点を加えればいい。ひとつの商品ができるまでには、生産地があり生産者がいて、それを売る事業者がいて、消費者がいる。これまではそれぞれが分断された点であったのをつなぎ合わせることで、商品のストーリーが浮かび上がります。そのストーリーに共感し、消費することで“いいね”という一票を投じることがエシカル消費の本質なんです。なので私は、「つくる責任 つかう責任」に「つながる責任」を加えましょうと、機会あるごとにお話ししています。

――「個人の消費には、社会を動かす力がある」という事例は、これまで「不買運動」に象徴されてきましたが、「エシカル消費」はもっと前向きな社会変革だと感じます。

飯泉:徳島の人々が、ボイコット(不買運動)かバイコット(購買運動)かを選ぶとすれば、お接待の精神がありますからバイコットなんです。つまりは、もともと徳島県民に息づいていた精神そのものが「エシカル」だったということです。

加渡:“つかう側”と“つくる側”、消費を通じた双方向からのコミュニケーションが大切であることも、徳島県民はよくわかっていると思います。

飯泉:“つかう責任”について、県民に“自立した消費者”を目指してもらうため、地域の消費リーダーを養成する消費者大学校で学ぶだけでなく、さらに人に教え自分が実践するための大学院を作りました。大学院卒業生などには、行政と地域と消費者を結んで情報発信や相談対応を行う「くらしのサポーター」としても活躍していただいています。また、“つくる責任”について、本県に設置された国の本庁機能を持つ恒常的拠点である「消費者庁・新未来創造戦略本部」と連携し、県内事業者に対し「消費者志向経営」を推進してきました。今では、県内45の事業者が「消費者志向自主宣言」を掲げるまでになっていますが、これも時流に乗って宣言したというだけではない背景があると思います。その理由は、今日加渡教授が着ておられるスーツにも施された藍染めにあります。江戸時代、高品質とされた阿波藍は、徳島藩に多くの富をもたらしました。この藍をもとに、人々は物を見る目を養い商売感覚を磨いてきたんです。このセンシビリティの高さが“つくる側”の精神にも備わっていると思います。

――エシカル消費の認知を、今後さらに広めていくための取り組みとしてはどんなことが挙げられますか?

飯泉:今注力しているのは教育です。センシビリティの高い思春期の子どもたちは気候変動を肌で敏感に感じ取っています。そんな子どもたちがエシカル消費について学べる環境をつくることで、能動的な行動がとれるようになっていく。この考えから、県内すべての高校等で消費者庁作成の教材「社会への扉」を活用した授業を実施。2019年に消費者庁と徳島県との共催で日本初開催となった「G20消費者政策国際会合」でも教育に焦点があたり、徳島商業高校の生徒がカンボジアー日本友好学園の生徒たちと共同開発したフェアトレード商品について英語でプレゼンテーションしました。そして同年に全国で初めて開催されたのが「エシカル甲子園」です。全国12校の高校生たちがエシカル消費の取り組みを発表しました。

加渡:地球は“おかわり”できないとわかっていながら腰の重い大人たちを動かすためにも、子どもたちが能動的に自分たちの考えを多くの人に発信できる場をつくるのは、とても大事なことだと感じています。

おふたりが最近エシカル消費したもの

左:広島に贈られた折り鶴の再生紙を利用しデザインされたうちわ。実は徳島の工場で生産されているんです(加渡)。

中:アートの力で分野を超えた共創を生みだす「SLOW LABEL」と、徳島の障がい者支援施設が制作した天然藍の糸で刺繍を施した一点物の手作りブローチです(加渡)。

右:徳島県内のさまざまな藍染工房で制作したマスク。各工房の特色がよく表れていて私も愛用しています(飯泉)。


【お問い合わせ】
徳島県

☎088-621-2196


情報は、FRaU2021年12月号発売時点のものです。
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Photo:Mina Soma Text:Eri Ishida