世間に衝撃を与えたライブドア事件と検察の権威失墜の始まり

金融庁戦記 企業監視官・佐々木清隆の事件簿4/終
まるで銭形警部のように「最新の金融犯罪」を追いつづけ、底なし沼のような腐食の連鎖に立ち向かった金融官僚の、挑戦の20年を追った『金融庁戦記 企業監視官・佐々木清隆の事件簿』から注目の章をピックアップして連続掲載!!

「バレないので絶対に大丈夫」

2006年1月16日、東京地検特捜部と証券取引等監視委員会は六本木ヒルズ三38階のライブドアを電撃的に急襲した。日本中のマスコミを呼び集めて生中継させた家宅捜索だったが、この時点での容疑は、子会社のライブドアマーケティング(LDM)が出版社のマネーライフを株式交換で買収した際の、偽計取引と風説の流布(証券取引法違反容疑)だった。小宮が特捜部に協力して話した内容が土台になっていたようだった。やがて社長の堀江貴文をはじめ、宮内、岡本、中村長也の各幹部が逮捕され、ライブドアの監査を受け持っていた港陽監査法人の2人の会計士も在宅起訴された。

ライブドア堀江貴文社長(当時)Photo by GettyImages

特捜部は、100分割で株価が高騰しているときに、株式交換で発行した新株を秘かに売って売却益を還流させている、と疑った。実際にLDMの岡本文人社長は、そうするつもりだった。小宮からは「100分割の高騰時に合わせて株式交換をするのは不正行為です」と諫言されていたが、宮内亮治から「バレないので絶対に大丈夫」と言われ、堀江貴文からも「ライブドアグループの方針としてお願いできませんか」とメールが来ていた。岡本は罪悪感を抱いたが、不正行為に関与することに批判的な小宮に対して「今回もこの取引で企業利益を計上しようと思います。これを拒否するのであれば役員を退任すべきです」とメールを送った。

 

だが、そうは言ってみたものの、岡本は「人生をかけるくらいに」悩み、結局は直前になって悪事に加担することをやめた。顧問弁護士の指摘を受け、結果的に小宮の諫言に従ったのだ。「莫大な利益を逃しました。でもホッとしました」と岡本。100分割で意図的に高騰させて儲けたという、検察が当初描いていた見立ては当てが外れた。

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