ジェンダー問題や人種問題について、議論が進んでいる海外。翻訳本が伝えるのは、一歩先をゆく国々がぶつかってきた課題や問題です。本を通して他国に目を向けること。3人の書店員におすすめを聞きました。

SELECTOR
くまざわ書店八王子店
磯前大地

人文系出版社を経て書店員に。専門は人文、法律、理工など。人文社会科学での主な関心はポスト構造主義の哲学、精神分析、戦後文学。

代官山 蔦屋書店
宮台由美子

代官山 蔦屋書店の人文コンシェルジュ。哲学、思想、社会などの選書やイベントを企画。ポッドキャストにて代官山ブックトラックも開始。

マルジナリア書店
小林えみ

出版社・よはく舎の編集者として活動する傍ら、2021年に東京・分倍河原駅前に書店をオープン。人文書を中心に3000冊をセレクトする。

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「フェミニズムは女性、男性、
それ以外の人々がみんなでする冒険だ。」
『キングコング・セオリー』より

左から、『LGBTヒストリーブック 絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』ジェローム・ポーレン著、北丸雄二訳(サウザンブックス社/2019年)、『キングコング・セオリー』ヴィルジニー・デパント著、相川千尋訳(柏書房/2020年)、『イラストで学ぶジェンダーのはなし』アイリス・ゴットリーブ著、野中モモ訳(フィルムアート社/2021年)、『読書する女たち フェミニズムの名著は私の人生をどう変えたか』ステファニー・スタール著、伊達尚美訳(イースト・プレス/2020年)、『第三の性「X」への道 男でも女でもない、ノンバイナリーとして生きる』ジェマ・ヒッキー著、上田勢子訳(明石書店/2020年)

1.権利を求め続けた100年の闘いの記録。

20世紀を軸に、それ以前や21世紀の動向も踏まえてLGBTの歴史や公民権運動の歩みを詳細に記載。「多様な性について社会で議論されるようになってきたのは、ここ最近の話。こうしたトピックに関心のある大人でも、きちんと今の社会的状況やその背景を説明できる人は少ないのでは。そんな大人をはじめ、子供も分かりやすく学べる貴重な本。『やってみよう』のコーナーも新鮮なのでぜひチャレンジを!」(小林)

2.怒ることの重要さを突きつけられる話題作。

17歳で受けたレイプ被害や、その後の売春経験を綴り、議論を巻き起こしたフランスのベストセラー。「女であることの堪えがたさといったら! 見ないふりをしてきた様々な経験を思い起こし怒りがふつふつと湧いてくる刺激的なエッセイ。性暴力、売春、ポルノについて自伝的な経験による独自の視点が歯切れよく、力強い。“女性のちっぽけな特権”も“男性のちっぽけな既得権”もすべて捨て去る突破口のために」(宮台)

3.ジェンダーとは? の答えが詰まった入門書。

イラストと平易な言葉によって、ジェンダーの歴史、用語、基本の考えまでを正しく学べる名著。「多様なジェンダー、セクシュアリティ、アイデンティティの存在とそれを表す言葉を知り、認識をアップデートするための本。ジェンダーは多様で、流動的で、誰もが人生の何処かで変わりうるかもしれないという柔軟さを知り、社会システムのあらゆる事象と複雑に絡み合っていることを自然に学べる」(宮台)

4.エッセイを通して学ぶフェミニズムの名著。

バージニア・ウルフの『私ひとりの部屋』やボーボワールの『第二の性』などを軽やかに紐解くエッセイ。「結婚や出産、子育てと仕事。がむしゃらに頑張っても、どうにもならない現実。その中で、自らのアイデンティティの折り合いのつけ方をフェミニズムの名著との出会い直しによって見出していく。フェミニズムの歴史をたどる読書案内であり、“この現実”と向き合う同じ境遇の女性たちに勇気を届ける」(宮台)

5.当事者が語る、性別を超えた自分らしさ。

著者は、2017年にカナダで初めてのノンバイナリーの出生証明書を取得したLGBTQ2+活動家。「LGBTQ2+コミュニティの権利と平等を求めるために、1ヵ月をかけて故郷を徒歩で横断し成長してゆくその姿は、本来、人は他者と違いのあることが当たり前であり、またいかに日常においてそれが認められていないかということを考えさせる。自らの生活に引きつけ、受け止めたい貴重な経験談」(磯前)