自分勝手な存在と思われるのではないかという不安

LGBTQ+の活動に10年近く関わってきた自分でさえ、「同性婚」という単語の中に、「今は存在していない新しい制度を同性カップルたちが強く主張して求めている」、「個人のわがままのような思いを押し付けて周りに迷惑をかけている」というイメージを重ねてしまっていたことに気づきました。社会に対して、自分がそんな自分勝手な存在だと思われてしまうのではないかという不安、そして、結果として更に自分が差別や偏見、攻撃を受けてしまうのではないかという怖さ

一橋アウティング事件では、ひとりの学生が命を落としてしまった。差別や偏見の目にさらされ、攻撃されるのではないか…そんな思いを抱いている人は少なくない Photo by iStock
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LGBTQ+コミュニティ、特に私の周囲のゲイコミュニティのなかでは、ほんの数年前までは、「同性婚」を会話に持ち出す人は、海外かぶれで日本の状況をわかってない輪から外れた人、むやみに権利を振りかざすイタイ人、もしくは現実から目をそらす夢見る人のように思われ、そのように扱われていました。そして、「そんなこと言ったら、自分たちまで同じように思われてしまうから、やめてくれ」という、同調圧力のようなものが、今でも存在することも否定できません。

思えば、私自身も、世界で初めて同性婚を法制化したオランダの大使館とグッド・エイジング・エールズでイベントを開催した時も、米国カリフォルニア州での同性婚訴訟を追いかけた映画『ジェンダー・マリアージュ』の上映後トークショーに呼ばれた時も、同性婚が日本でも実現して欲しい、と自分自身の口から語ることに、どこか地に足のつかない、恥ずかしさに似た感情を持っていました。その言語化できない感情は、アライ中心の弁護士の方々が、なんの躊躇もなく「同性婚」を当たり前のものとして語ってくれるまで続いていたのです。それほど、LGBTQ+の当事者は、毎日の生活のなかで尊厳を傷つけられ、そんな存在であっても仕方ない、と社会に思わされてしまっているのだと考えています。

届けることのできない声なき声が、届けてはいけない声として当事者自らによって消されてしまわないように。「マリフォー国会メーター」を通して、「同性婚」を、正々堂々と選挙の当たり前の争点にしていきたいと思っています。

国会議員には、「明日の希望」を語って欲しい。

現在の「マリフォー国会メーター」の結果について、個人的に気になっているのは、半数近くの国会議員が「同性婚」に対して「どちらともいえない」もしくは「無回答」という反応であることです。

もちろん、賛成・反対の意向を判断するには、自分自身としての情報収集や理解が足りていないという状況もあるかと思いますが、一方、国民の調査結果で賛成の割合が64.8%に達していることを考えると、回答を避けているというのが大半なのではないでしょうか。目の前に、困っている当事者がいて、尊厳を奪われている当事者がいたら、それを解決していくのが政治の役割だと思います。では、誰のために、回答を避けているのか。ひとりひとりの国会議員が、候補者が、誰のことを考え、誰を向いて行動しているのか。そのこと自体も、可視化していくことが必要だと思っています。

1977年、米国カリフォルニア州で、初めてゲイであることを公表してサンフランシスコ市の市議会議員に当選したハーヴェイ・ミルクが、翌年暗殺される少し前に行われたスピーチがあります。

「希望がなければ。同性愛者だけでなく、黒人、アジア人、障害者、高齢者、マイノリティである私たちすべてが、希望がなければ、諦めるしかない。希望だけでは、生きていくことができないとはわかっているが、でも、希望がなければ、生きていることの価値がないんだ。あなたが、あなたが、あなたが、みんなに希望を与えなければいけない」

Without hope, not only gays, but those who are blacks, the Asians, the disabled, the seniors, the us's: without hope the us's give up. I know that you can't live on hope alone, but without it, life is not worth living. And you, and you, and you have got to give them hope.  

明日に希望があることを真摯に伝えてくれる、そのことを信じさせてくれる国会議員を、選びたいと思います。みなさん、ぜひ、いっしょに選びましょう。

2017年同性婚が法的に認められたオーストラリアで、その結果をお祝いする人たち。愛する人とパートナーとして公的に認められたい。そう思うのは、決して「言ってはならないこと」ではない。幸せに生きる権利なのだ Photo by Getty Images
2021年10月17日の衆院選前「目指せ!投票率75%」プロジェクト発足

目指せ!投票率75%」プロジェクトでは選挙に向けて様々な情報を発信中。衆院選の争点に関してアンケートをとった結果、多くの人が注目する「争点」を発表しています。1位は「ハラスメントの禁止」7位が「LGBTQの人権保障」でした。詳しくは公式HPでご確認ください。

〈実行委員メンバー〉
渡辺由美子 NPO法人キッズドア代表
藤沢烈 一般社団法人RCF代表理事)
林 大介    模擬選挙推進ネットワーク代表・事務局長
井田 奈穂 選択的夫婦別姓・全国陳情アクション事務局長
松中 権     ゲイ・アクティビスト
室橋 祐貴 日本若者協議会代表理事
細谷 柊太 NPO法人ドットジェイピー
尾上 瑠菜 NPO法人ドットジェイピー

〈アドバイザー〉
荻上 チキ    一般社団法人社会調査支援機構チキラボ代表
佐藤 大吾    NPO法人ドットジェイピー 理事長
三浦 まり    パリテ・アカデミー共同代表、上智大学法学部教授、政治学者
宮本 聖二 立教大学大学院/Yahoo!ニュース プロデューサー