2021.10.29
# 化学反応

今年のノーベル“化学賞”、どんな研究かご存じですか? 現役東大生のサイエンス入門

「不斉有機触媒」とは?

今月の頭に、ノーベル賞受賞者が発表されました。日本出身の真鍋淑郎氏が物理学賞を受賞されたことが大きな話題となりましたね。真鍋氏の、二酸化炭素濃度の上昇が地球温暖化につながることを示したという研究にも注目が集まっています。

他にはどんな方が受賞していたのでしょうか。まずは、どんな研究でどなたが受賞されたのか、振り返ってみましょう。

科学分野の受賞者と受賞理由

自然科学の分野では、まず10月4日に医学・生理学賞が発表され、温度感覚と触覚の受容体を発見した功績で、アメリカ人のデービッド・ジュリアス氏とアーデム・パタポティア氏に授与されました。

続く10月5日には物理学賞が発表され、気候変動モデルの開発・物理システムの研究でアメリカ人の真鍋淑郎氏、ドイツ人のクラウス・ハッセルマン氏、イタリア人のジョルジョ・パリージ氏に授与されました。

そして最後に10月6日、化学賞は不斉有機触媒の開発により、ドイツ人のベンジャミン・リスト氏、アメリカ人のデイビッド・マクミラン氏に与えられることが発表されました。

この3つの賞のうち、内容がもっともイメージしにくいのはおそらく化学賞ではないかと思います。今回は、化学賞が与えられた研究がどのような功績なのかを説明していきたいと思います。

2021年のノーベル化学賞を受賞したベンジャミン・リスト氏(Photo by gettyimages)
2021年のノーベル化学賞を受賞したデイビッド・マクミラン氏(Photo by gettyimages)

不斉有機触媒とは?

受賞理由は、上述の通り「不斉有機触媒の開発」でしたが、不斉・有機・触媒という言葉は聞き馴染みのない方も多いかと思いますので、それぞれについて順に解説していきます。
 
まず触媒とは、化学反応を助けるものです。触媒自体は、化学反応で別の物質になるわけではありませんが、触媒があることで反応が進み、通常は起こりにくい反応でも取り扱えるようになります。

例えば、二酸化マンガンが、過酸化水素から酸素が発生する反応を触媒する、という話を聞いたことがある方も多いと思います。このとき発生している酸素自体は、過酸化水素が分解することでできるのですが、過酸化水素があるだけではこの分解反応はほとんど起こりません。二酸化マンガンが触媒として作用することではじめて、盛んに分解反応が起こり酸素を発生させることができるのです。

様々な重要な物質を作る際、多くの場合触媒が不可欠なので、化学では触媒の研究が重視されています。ノーベル化学賞も、1909年のヴィルヘルム・オストヴァルト氏に始まり、日本人の野依良治氏(2001年)、根岸英一氏、鈴木章氏(2010年)など、触媒に関する研究で授与されたケースが数多くあります。

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