震災後の困窮をテーマにした映画『護(まも)られなかった者たちへ』(瀬々敬久監督)が上映されている。東日本大震災から10年目の仙台で、全身を縛られ餓死させられるという殺人事件が相次ぐ。捜査で浮かび上がったのは、別の事件で服役し、出所したばかりの利根(佐藤健)という男。刑事の笘篠(阿部寛)は、殺された2人の被害者から共通項を見つけ、利根を追い詰めていく。中山七里のミステリー小説が原作のフィクションではあるが、震災で親を亡くした子と、困窮する高齢者、家族のいない若者、まさに「護られなかった」人たちが絆を求める過程に、リアリティがある。

(c)2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会

生活保護申請やアパート入居の支援をする認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」事務局長で社会福祉士でもある加藤歩さんによると、2001年設立当初の相談者は中高年の路上生活者が多かったが、今では若い世代や女性にも広がっているといい、貧困や生活保護は遠い世界のことではなくなっている。

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非常時に必要なセイフティネットは

映画で佐藤健さん演じる利根は、児童養護施設で育った。険しい表情で、社会への怒りをみなぎらせる一方、東日本大震災後の避難所で出会った遺児や、倍賞美津子さん演じる「けいさん」には心を開く。3人で本当の家族のようにいたわり合い、笑顔を見せる。自宅に戻ったけいさんは困窮し、利根らの勧めで生活保護の申請をするが、取り下げて餓死してしまう。

殺人事件の背景には、そのような悲しい物語があった。清原果耶さんも、被災地を舞台とした朝ドラ『おかえりモネ』の主人公とは全く違うキャラクターの女性を熱演し、心の痛みが伝わってきて、非常時に必要なセイフティネットは何か、考えさせられた。

『おかえりモネ』でヒロインを演じる清原果耶さんは、社会福祉保健事務所の職員・円山幹子を演じている (c)2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会

2021年は東日本大震災から10年。福島や宮城では、家族を亡くした遺児の支援や、不安定になりがちな子供を支える地域活動が続いている。改めて東北に住む知人に聞くと、「今年2、3月に起きた福島・宮城地震で再び被災し、建物の改修に時間がかかっている」「コロナ禍、飲食店のお客さんは以前の5割程度で厳しい」といい、新たな困難と向き合う。

食材配布、コロナ前60人→300人以上に

そして長引くコロナ禍は、あらゆる地域で私たちの生活と心に、大きな影響を及ぼしている。コロナ禍を「災害」「非常時」と表現する人も少なくない。

もやいは2001年から、困窮する人たちの支援をしてきた。生活保護の申請に同行し、住まいを見つけて入居する際に、緊急連絡先・保証人を引き受ける。支援した人には、ニュースレターと共に返信用のはがきを郵送し、必要なら連絡が取れるように気づかう。継続支援をしている人は1400人ほどいる。

もやいのスタッフは 、対面の相談に乗り、毎週土曜日は、フードバンク等の協力で「新宿ごはんプラス」と協働して 、都庁近くで食材配布を続ける。

「コロナ前のごはんプラスには、路上生活の中高年の方を中心として、60人ほど来ていました。ところが最近は、一度に350人~370人も集まります。20代ぐらいの若い人、子連れのお母さんや、スーツを着た男性、学生風の女性もいて、近くのワクチン接種会場に来た人の列なのか、食材を求める列なのか、区別がつかないぐらいです。何回か見かける人も、初めての人もいます」(加藤さん)

もやいで開いていた対面のカフェは、休んでいる。コロナ禍に、ふらりと集える場がなくなった今、ごはんプラスは、じかに触れ合う機会でもある。

食料配布の場所の確保も簡単ではない。外で配布せざるを得ず、天気に左右されることも…(写真はイメージです)Photo by iStock