資本主義がなくなると「好きなこと」だけで食べていける?

経済学者バルファキスとクリエイターエコノミー
青木 由美子 プロフィール

「親ガチャ」が消える「相続」というシステム

パーキャブ口座には「相続」もある。赤ん坊が生まれた瞬間に信託資金として全員にまとまった額が振り込まれるのだから、「もう一つの世界」に親ガチャは存在しない。生まれながらにタネ銭があるのだから、若くして起業することも可能となる。

 

――赤ん坊はみな裸で生まれてくる。だが、すぐに高価なおくるみに包まれ、特権的な人生が用意された者もいる。ところが、ほとんどの者は襤褸をまとい、奇跡でも起こさない限り、疲弊、搾取、隷属、不安の人生からは逃れられない。それが「ゆりかごから墓場まで」続く、コスタの世界を定義する不平等だ。

だがコスティの世界では、この世に生まれ出た瞬間に、国が赤ん坊のためにパーキャプ口座を開設する。そして、3つのうちの「相続」にまとまった資金を振り込み、全員が同じ額を受け取る。赤ん坊はやはり裸で生まれてくるが、誕生とともにかなりの額を社会から支給される。

こうして、成年に達して企業に入るか、ひとりで、あるいは仲間と起業する時には、どの若者もすでに資本を蓄えていることになる。その資本を浪費してしまわないよう、パーキャプのなかで「相続」は最も流動性が低く、65歳未満の者が利用する際には、面倒な手続きや厳しい審査をくぐり抜けなければならない。

日本政策金融公庫の調査によれば、2020年の日本の開業平均年齢は43.7歳。1991年の調査開始から最高年齢を記録している。高齢化社会の影響は明らかだが、「若者が起業しやすい社会」とは言えないことも確かだろう。

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