2021.10.24
# ライフ

山中伸弥教授✖小児脳科学者「『お願いだからわかってよ』は甘え」

山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る(6)
これまでいくつかの書籍を刊行してきたノーベル賞科学者・山中伸弥教授だが、「子育て」について書いた​本はまだ一冊もない。どうすればわが子が山中教授のように育つのか?を知りたい全国の親御さんに届ける子育て本『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』が発売中。
神戸大学医学部時代の同級生で、山中教授の「勉学の恩人」でもあった小児脳科学者・成田奈緒子医師が、山中教授がこれまで語ったことのない本音を引き出します。

相手の目線に立つ

成田 いま、そしてアフターコロナの時代をしぶとく生き抜くために、私たち日本人には何が必要でしょうか。難しいテーマだけど、一緒に考えてみましょう。

山中 そうだなあ。まず、これだけの変化に順応していくには、みんなで知恵を出し合って乗り越えなくちゃいけません。それにはやはりコミュニケーション能力が重要だと思います。僕自身、アメリカで他者と分かり合う大切さを学びました。思ったのは、言葉を尽くせる日本でのほうが、もしかしたら分かり合えているか怪しいってこと。

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成田 わかる気がします。日本人が昔から言ってきた阿吽の呼吸って、もはやかなり難しい。

山中 例えば、講演や何かの発表で自分は要点を話したつもり、なるべくわかりやすく話したつもりだとしても、相手が理解していなければその時間は無意味になります。そこで「理解できないほうが悪い」と判断してしまうと、自分自身が進歩できません。だから、もし相手に伝わらなかったとしたら「それは僕が悪い」と思うことにしています

成田 素晴らしい心がけやね。同じ内容を話すとしても、その時々で聴いている人は違うから。

 

山中 そうなんです。「今日はこういう人たちが聴いているから、言い方や言葉をこんなふうにしてみよう」とか「普段は専門用語を使うけれど、今日は専門用語をやめてもっと簡単にしよう」「スライドも難しい言葉を少し簡便なものに書き直そう」とかね、結構工夫して発表しています。

成田 山中君の講演は、わかりやすいと評判のようですよ。

山中 ほんまですか(笑)。本当なら嬉しいけど。それで、このことは同僚や部下と話すときも、同じように心掛けなければいけないと思ってるんだけど、これがなかなか難しい。

成田 つい、言わんでもわかるやろ、と。

山中 そこを解決するには、誰を前にしても対等な関係として捉えることが大切やと思ってる。つい、「おいおい、お願いやからわかってくれよ」と寄りかかってしまう。それって、甘えだよね。

成田 それで言うと、親とか教師って、子どもに、わかるよね? という無言の圧力かけるじゃない? 説明せずに、圧力でわからせようとするのは、大人たちが子どもより「上の立場」と思ってるからだろうね。「コミュニケーションは相手に伝わるように工夫をしなくてはいけない」という概念が浸透すれば、子育ても、教育も、違ったものになると思います。

山中 伝える力って、結局は相手を知ることから始まるよね。さっき言った「今日はこういう人たちが聴いているから」って相手を理解する。いや、もちろん完全には理解できないんだけど、こちらが理解しようとする熱は相手に伝わると思う。

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