男社会の音楽業界はセクハラやパワハラの巣窟

人気音楽雑誌の編集部のライター募集に応募し、その文才を認められ見事採用された主人公のジョアンナを最初に悩ませたのは、セクハラとパワハラの巣窟ともいえる、90年代初頭のイギリスの音楽業界はの状況だった。これは、モラン氏の経験とも重なる。

ジョアンナが働く音楽雑誌「D&ME」の編集部は、彼女以外は全員男性/『ビルド・ア・ガール』より

映画には、ライターデビューしたばかりのジョアンナが特集の企画を男性編集者に提案したときに、彼の膝に座るよう促される場面があるが、それは実際にあったことだという。年上の男性上司から命令される恐怖。断れば最悪クビになるかもしれない。追い詰められたモラン氏がとった行動は、膝に乗り、その上で思いっきり飛び跳ねることだった。映画でもそのシーンはユーモアたっぷりに描かれている。

でも、これはユーモアで返さざるを得なかった苦しみも表している。

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セクハラやパワハラは“ジョーク”の形で起こるんです。かなりひどいことを言われたとしても、ジョークには怒らずにジョークで切り返す、というのが当時の空気でした。

それは、男性同士でも同じ。つまり、セクハラもパワハラも“弱い者いじめ”、パワーゲームなんです。田舎から出て来た16歳の女の子だった私は長い間、嫌なジョークを言われても、それが性差別やパワハラだという自覚がありませんでした。でも、フェミニズムを見つけて、やっと理解できるようになりました」(キャトリン・モラン氏、以下同)