2021.10.25
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9.11テロ容疑者を襲った収容所での尋問 水責め、強制性交…なぜ男は闘い抜くことができたのか

『モーリタニアン 黒塗りの記録』

すべての国会議員に見てほしい

──この映画に出てくる「黒塗り文書」を見ると、名古屋出入国在留管理局の施設でスリランカ人女性が死亡した事件など、昨今、我が国で「公文書」が問題となった事件を想起する人も多いと思います。

「公文書管理法」と「情報公開法」がいかに社会にとって大切か、民主主義の拠り所になっているかが、この映画を見るとよくわかります。この二つがあるからこそ、アメリカ国民は、社会がどんなに不条理でも、必ずジャスティスが行われるという信頼を持ち続けていられる。この二つは、民主主義の最後の砦だからです。

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一方、日本は公文書の隠蔽や破棄もさることながら、そもそも公文書自体の定義があいまいで、十分に議論されていません。ゆえに薬害エイズ、モリカケ、名古屋の入管……と、問題が続いている。公文書管理法と情報公開法が機能すると、国民の根強い政治不信は改善され、政府はもっといい仕事ができるようになるでしょう。折しもデジタル化が進められている今、すべての国会議員に是非この映画を見て欲しいですね。日本が「デジタル化」を成功させるために、まさにタイムリー、必見の映画だと思います。

(c)今井一詞

──公文書問題を考えるにあたっても、今、見るべき映画だということですね。グアンタナモ収容所については、オバマ政権が閉鎖を宣言したものの、現在も実現に至っていません。9.11から20年経ちましたが、映画で描かれていることは“現在進行形”の物語であることが、最後に示唆されます。

モハメドゥさんのヒューマンドラマで感動した後に、ラストで、驚きの事実が明かされます。監督のあの構成は見事で、映画を見た人が最後にあれをみて、今度は自分で主体的に情報を探したり、考えたくなる作りになっている。是非エンドロールまで見て下さい。

映画の後半に、モハメドゥさんが「アラビア語で「自由」と「許し」は同じ単語なんだ」と言う場面があるんです。あれを観た時、9.11後に取材した遺族が「犯人を許したい」と話して下さった事を思い出しました。「憎しみは残された私達を、過去に閉じ込め苦しめ続ける。許す事で自分を自由にし、息子のためにも未来を生きる事にした」と。それを聞いた時私は、この仕事を続けようと決めたんです。この映画を見て、あの時の感動が甦りました。

(取材・文/砂田明子)

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『モーリタニアン 黒塗りの記録』
10月29日から全国公開

https://kuronuri-movie.com
堤 未果(つつみ みか)国際ジャーナリスト、ニューヨーク市立大学大学院修士号取得。国連、証券会社を経て現職。『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞受賞。『ルポ 貧困大国アメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞、新書大賞を受賞。著書多数。新刊に『デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える』(NHK出版)