2021.10.25
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9.11テロ容疑者を襲った収容所での尋問 水責め、強制性交…なぜ男は闘い抜くことができたのか

『モーリタニアン 黒塗りの記録』

暴力、水責め、強制性交……なぜ彼は闘い抜くことができたのか

──「モハメドゥを死刑第一号に」という政府の命を受け、米軍側の起訴を担当するスチュアート中佐は、親友を9.11で亡くしています。怒りと悲しみを抱えながらも正義を貫こうとする中佐と、弁護士のナンシーが真実に辿りつくまでの、緊張感あふれる法廷闘争も見どころですね。

二人とも演技が素晴らしかったですね。ジョディ・フォスターは昔から大好きな女優さんで、今回、なんて素敵な歳の重ね方をしているだろうと、改めて感動しました。クールで冷静で抑えた演技のなかに、たまに見せる人間らしい喜怒哀楽。そのコントラストが抜群ですね。モハメドゥさんの身に起きたことをすべて知って、手を重ねるシーンには泣きました。そしてなんといっても、モハメドゥさんの魅力がこの映画をけん引していると思います。

(C)2020 EROS INTERNATIONAL, PLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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──暴力、水責め、強制性交、苦痛な姿勢、苦痛な音……「特殊尋問」と呼ばれる残酷な拷問を受けてなお、モハメドゥは人間らしさを失わない。極限を生き抜く人間の強さとは何かを教えられます。

自分を閉じ込めている看守をきちんと名前で呼ぶシーン、ああ、素敵だなあと感動しました。大きな権力や不条理と戦うときに、人間には二つ選択肢があると思います。一つが、この映画のモハメドゥさんが見せてくれたように、より人間らしくなること。人間はこんなにも愛情深く、良き存在であることを見せられた時、私たちは心を動かされます。反対に、悲惨な真実を見せることで考えさせるショック療法的な手法もあって、そういう場面もこの映画には出てきますね。拷問をしている米兵の疲弊した表情をチラリと見せるなど、この映画には、一つの事実を単純な善悪に閉じ込めずにその構造を考えさせる、監督のメッセージがいくつも埋め込まれています。

そしてもう一つ大切なものが、情報です。機密文書や手記が公開されたからこそ、隠されていた真実が明らかになったこと、これがこの映画が投げかける大きな希望の一つです。