「M1 Pro/Max」と「Pixel 6」に共通する戦略とは?

アップルとGoogleが創造する未来
西田 宗千佳 プロフィール

「重い処理」でも能力を発揮

PCもMacも、速度が必要な(いわゆる重い)処理をおこなうと、そのぶん消費電力は上がる。M1 ProやMaxになったことで、M1に対し、消費電力は確実に上がっているだろう。

アップルが示したグラフによれば、「一般的な8コアのCPU」に比べ、M1 Pro/Maxは70%少ない電力で同じ能力を発揮するとしている。同じ電力で動作した場合、1.7倍の性能を発揮するということだ。

【写真】M1 Pro/Maxの少ない消費電力アップルが示した資料によれば、同じような処理をおこなう場合、M1 Pro/Maxは70%少ない電力しか消費しないという

GPUではさらに顕著だ。

GPU性能の高いハイエンドのノートPCで比較した場合、M1 Maxは同じ性能を100W近く低い消費電力で実現するとしている。そもそもハイエンドな製品は、ノートPCといえども、電源をつないだ状態でないと電力供給が足りず、性能を発揮しづらいものだ。

だが、M1 Maxの場合は、電源につないでいようがバッテリーで動作していようが、性能は変わらない。したがって、バッテリー動作で比較すると、その差は「3.3倍」にもなるという。

【写真】電力消費の低下と、性能の維持写真上:電源をつないで使った場合、M1 Maxは電力消費が100W低い、とアップルは主張する 写真下:電源をつながない場合、GPUを活かせずに性能が落ちるPCが多いが、M1 Max搭載のMacBook Proは違う

これらの比較はあくまで「アップルによるもの」であり、対象製品の機種名や細かな比較条件は明らかにされていない。本当に妥当な評価なのかどうかは、別途、検証が必要だろう。

とはいえ、昨年登場したM1搭載Macは、筆者の実感としても、「バッテリー動作であろうが電源につないで使おうが、同じように高い性能を発揮する」印象をもっている。だとすれば、今回アップルが主張していることも、大きく外れている可能性は低そうだ。

差別化ポイントは「1つの半導体にまとめる」こと

アップルは、消費電力を抑えても性能を引き出せる理由の一つとして、「GPUをあえてCPUと1つの半導体にまとめていること」を挙げている。

高性能なPCの場合、CPUとは別にGPUをチップとして搭載し(これを「外付けGPU」などとよぶ)、メモリーもCPUとGPUそれぞれに搭載していることが多い。このような構成にすることで、CPUとGPUそれぞれで技術的向上を図ることができ、設計上の柔軟性が高くなるメリットがある。一方で、それぞれが電力を消費することになり、データ転送などにかかる負担が大きくなる欠点もある。

アップルは、今回発表した新しいMacBook Proのように、GPUへの負荷が大きくなる「高性能製品」においても、1つのダイの上にCPUとGPUを搭載する方針を採った。そしてさらに、利用するメモリーに高速なものを採用し、広帯域の「バス」でつないでいる。

「ユニファイドメモリー構造」とよばれるこのような構成は、製造や開発のコスト面で不利な点もあるが、性能をムダなく発揮しやすい特性をもつ。消費電力の低さや性能の高さは、そうした組み合わせの賜物だろう。

【写真】M1シリーズのCPUとGPUM1シリーズではCPUとGPUを1つのダイにまとめ、メモリーを共有する「ユニファイドメモリー構造」で処理効率を上げている

アップルの今後を示す「注目すべき発表」

一方、それだけ性能が高くても、使うアプリがなければその意義は薄れてしまう。

グラフィックスや音楽などのプロ向けアプリはMacにも揃っているが、ゲームや3D CG向けでは、Windowsほど潤沢ではない。今後重要になるのは、いかに「GPUを活用するアプリ」をMacでも使えるようにするか、ということになるだろう。

10月14日、アップルの新MacBook Pro発表に先立ち、ある団体が発表をおこなった。

その団体とは、オープンソースの3D CGソフト「Blender」の開発をおこなっているBlender Foundationだ。Blenderは多くのゲームや映画で使われているソフトで、日本では、「エヴァンゲリオン」シリーズで知られる映像制作会社・カラーが導入し、積極的に活用していることで知られている。

Blender Foundationは同日、アップルが、開発基金提供メンバーのなかでも最上位に位置する「Patron」として参加したことを発表した。これはすなわち、プロ向けのCGツールの開発と利用について、アップルが積極的に関与していくことを示している。

その前提となるのは当然、M1 Pro/Maxを使うMacBook Proのような「プロ向けMac」の存在だろう。

そして、「プロ向け」という観点から、面白いことがある。

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