2021.10.29
# マンガ # 不正・事件・犯罪

「えーと」「あの〜」のつなぎ言葉まで、警察通訳人がすべて訳す「深すぎる理由」

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「警察通訳人」というキーワードで検索すると、様々な県警による民間通訳人の募集案内が出てくる。

これまでの遅れを取り戻すかのように、いま日本は急速に多国籍化しつつある。コロナ禍で自由な渡航が難しいとはいえ、今後もその流れは変わらないだろう。人が増えれば、諍いやトラブルも増えるもの。日本の警察の中でも、「警察通訳人」の需要が高まっているのは明らかだ。

一体どんな仕事なのか。マンガ『東京サラダボウル ー国際捜査事件簿ー』で監修を務める関西司法通訳養成所代表の清水真氏に話を聞いた。

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何かがおかしい集団密航事件

――「警察通訳人」とは、どのような職業なのでしょうか。

清水:警察通訳と聞くと、おそらく多くの方が“取り調べ通訳”をイメージされると思いますが、それはほんの一部。いわゆるガサ入れといわれる家宅捜索や実況見分、被害届・遺失・拾得等の手続など、あらゆる警察業務において、異なった言語を話す関係者の意思を伝えるのが仕事です。

そして関係者というのは、被疑者だけではありません。被害者や目撃者など、事案に関わるすべての人が対象。外国人犯罪ばかりが注目されがちですが、トラブルに巻き込まれて被害者になる外国人も大勢いるんです。

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――清水さんは元警察官でもありますが、特に印象的だった事件はありますか。

清水:とある県で起きた100人以上におよぶ福建人の集団密航事件です。私は取り調べの通訳人として2日目の夜から一人ひとり聴取を始めたのですが、驚いたことに30人以上の被疑者がみんな「機関銃を構えた男から船に乗れと言われた!」と口を揃える。脅されて日本に連れてこられた“被害者”だと主張するんですよ。

ただ、何かがおかしい。中国・福建省をルーツとする福建人は基本的に無口で、取り調べでもなかなか話さないことが多いんです。それなのにこの時はみんな多弁だった。

そこで私は捜査員に1日目に誰が通訳に入ったのかと尋ねました。すると、一人の民間人女性の名前があがったのです。

その女性は在日台湾人で、密航事件があったことを聞きつけて自ら通訳を名乗り出たそう。しかし、女性はなぜそんなに早く密航事件が起きたことを知ったのでしょうか…。

実は、彼女は「蛇頭」と呼ばれる、中国人の密入国を斡旋する犯罪組織の一員で、通訳をするふりをして供述内容を指示していたんです。無口な福建人はそれを一生懸命覚えて、私に話したというわけです。

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