母がいないとダメなくせに…

父は。
母がいないとダメなくせに、昔から母との喧嘩が絶えない。
ある日、私は父に言った。

「誰から先に死ぬかわからないけど。ママには苦労かけてきたでしょ。パパも頑張ってきたよ。我慢もわかるよ。でも怒ったらママを追い込むだけだよ。出て行っちゃうよ。帰って来れないよ。他に行くとこなんかないじゃん。ここが家なんだから。ここに居たい、幸せだと思うようにしてあげようよ。私は、最後は自分の人生まんざらじゃなかったなと思って逝って欲しいよ。それはパパも。お姉ちゃんも。だから残ってる人が悔いのない見送り方をしようよ。そのためにも喧嘩しないで」

私がこの↑活字にした分量の言葉を父に発したのは人生初めてだ。

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耳が遠いので、近くで、大きめの声ではっきりとした口調で気持ちを伝えた。下手くそな朗読劇のようだった。

「わかった。わかっているよ」と父は言った。

次の日。
父は母と怒鳴り合っていた……。
……やはり「クソ」だった。

「ちょっと!」
仁王立ちで割って入る。

「すみ、ごめん、わかってるんだ」と。
……わかっていてか。
なら、少し、進歩か。

私も父程ではないが母にキレてしまうことがある。
言えたもんじゃない。