「女性芸人」の「女性」という
文字がとれたとき、平等が訪れる

サンキュータツオさん

漫才やコントに限らず演芸全般、落語などの古典芸能の世界でも女性蔑視に繋がるネタはウケなくなっています。もともと人を傷つけたくてお笑いをはじめた人はいません。経済活動と同じで、芸人はウケなければ、そのネタはやらなくなります。女性蔑視に限らずルッキズムに基づいたいじり方はウケなくなってきていて、今時それで笑いをとろうとするのもレベルが低いと思われるようになってきました。

今までは女性芸人の数自体が少なかったので、まずは女性であることに触れて笑いをとることはある意味常套手段。希少な存在だったからそうする意味があっただけで、これだけ女性芸人が活躍する時代になったら、女性であることをわざわざネタにすることの必要性がなくなりました。「女芸人No.1決定戦THE W 2020」で優勝した吉住さんは、R-1でも決勝に残りました。女性の大会でナンバーワンに輝いた人が、性別の括りのない大会でも結果を残している。これは大きなことだと思います。いつか「女性芸人」や「女流~」のような言葉がなくなったとき、はじめて平等になったと言えるのでしょう。

今、声を上げる大切さが叫ばれています。ダメだと思ったことにNOの声を上げることも重要だけれど、同じくらい「面白かった」という賞賛の声も重要。自分が見たいネタや、面白いと思うお笑いを今後も見られるようにするためにも、褒めることも積極的に行って欲しいと思います。

サンキュータツオ
漫才コンビ米粒写経のツッコミ。一橋大学、早稲田大学、成城大学で非常勤講師も務める。専門はお笑いの学術的な研究や、日本語学、語用論、表現論など。近著に『これやこの サンキュータツオ随筆集』(KADOKAWA)。

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「誰も傷つけない笑い」は
本当に存在するのか

たかまつななさん

私は社会問題をお笑いを通して提起することで、多くの人が身近に感じてくれるのではないかと思い芸人になりました。以前は女芸人は太っていないと売れないと言われていて、頑張って太ろうとしていた人もいたくらい女性芸人像は限定されていました。しかしお笑い芸人の在り方は多様になってきています。柳原可奈子さんが体型や顔で笑いを取らないスタイルを確立したり、森三中の大島美幸さんの結婚によって「女芸人はモテなくて孤独」というイメージを壊したり、ぼる塾の酒寄希望さんは育休をとっています。そして容姿いじりをしないと公言する人も増加。しかし社会問題をお笑いのネタとして取り入れる人はほとんどいません。何年も前のネタや発言さえも槍玉に上がって仕事がなくなってしまうような現象が起きているので、炎上しそうなネタはみんなが避けているというのが現状です。

私はコンプレックスを笑いとして昇華するという方法もあると思っています。しかし、現代でそのお笑いをやるためには、私自身にその覚悟もセンスも足りていないと感じ今はネタを書いていません。

例えば、お笑いの業界では犯罪歴のある人が芸人として大成して一発逆転という可能性も充分にあり、社会のセーフティーネットとして機能しているという事実もありました。「誰も傷つけないこと」に重きを置きすぎて、芸人にもネタにも清廉潔白を求める風潮には疑問を感じています。

たかまつなな
時事YouTuber。お嬢様芸人としてデビューし、テレビや舞台で活躍。笑下村塾という会社を立ち上げ、お笑いを通して社会問題への提起を発信している。SDGs体験型オンラインサロン「大人の社会科見学」を主宰。